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噛まれたり、引っ掻かれたり、シキの体液を少しでも体内に取り込んでしまうと、もう助かる術はない。
脳が侵され、心臓が停止して、いずれシキとして蘇ると生きた人間を襲うようになる。
ハオにそう聞かされ、飛香は考える事を拒絶するかのように思考を止めた。
元いた部屋に連れ戻されても抵抗する気力さえない。
見知らぬこの土地で他に行く当てもなく、途方に暮れるしかなかった。
「そんなに気落ちするなって。オレらに拾われてラッキーだったじゃん」
明るい調子で声をかけてきたのはウィルだった。
そういえば礼を言ってなかった事を思い出し、気を取り直して向き直る。
「助けて、くれたんだよな。…ありがとう」
「別に礼なんていいのに。オレの場合は下心アリなわけだし」
「…は?」
「あんたのニオイが気になったから、結果的に助けることになっただけだよ」
「に、匂い?」
ナギにも似たような事を言われていたので気になり、飛香は服を摘まんで嗅いでみた。
確かに埃と汗に塗れて臭う気がするが、そこまで酷いだろうか。
年頃の女のように気にするわけではないが若干ショックを受けていると、ウィルはケタケタと笑いだした。
「違う違う。そういうんじゃなくて、血だよ、血」
「血って……うわッ!?」
そんなに臭うものだったかと考えていると、
背後に大きな影が覆いかぶさってくる。
後ろから羽交い締めにされ驚いていると、ナギが肩の辺りに顔を埋めていた。
「な、何してんだ、離せ!」
「あーーー、もうダメだ。我慢できねえ」
「はあ!?」
「何なんだよ、このニオイ。すっげぇ、うまそうな……」
「え…ちょ、わッ」
逃げようとした腰を抱き寄せられたのも束の間、首筋にピリッとした痛みを感じて目を瞑る。
まるで他人事のように、噛み付かれた、と飛香は思った。
「いッ…ぁ」
身体の芯が熱を持ち、くすぐったいような、妙な感覚に襲われる。
ぞわぞわと足の爪先から何かが駆け上がってきて、目元に生理的な涙が滲んだ。
抵抗したくても力が入らず困惑していると、ウィルの静止する声と共に感覚は途切れた。
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