アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
027
-
「ナギ!!」
「……チッ」
「テメェ…オレだってまだなのに」
「早い者勝ちだろうが。こいつ…かなりの上物だぜ」
口元の血を拭ったナギは、色濃くなった赤い瞳で飛香を一瞥した。
その視線にぎくっと身体が強張る。
「怯えさせてどうするんだよ!」
「知るか」
「せっかくこれから懐柔しようとしてたのに…」
「一々まどろっこしい事してっから先越されるんだろうが。見てて苛々すんだよ。欲しいもんが目の前にあんのに我慢できるか」
そう言いながら機嫌良さ気にナギは口の端を吊り上げた。
チラリと見えた犬牙は鋭く、まるでヴァンパイアを連想させる。
「今、何した……ッ?」
「あ?吸ったんだよ、血を。お前なら俺専用の隷属にしてやってもいいぜ?」
「吸った、って……なん、で」
「ヴァンパイアが血を吸う理由なんて一つだろ。そこに美味そうなエサがあるからだ」
当たり前のようにナギの口から出た発言に驚愕する。
全員に共通する赤い瞳。
それが何を意味するのか理解した時、飛香はゾッと背筋を凍らせた。
(なんでもっと早く気付かなかったんだ。赤い瞳なんて、普通の人間にいるわけないのに)
ヴァンパイアなんてものが実在するとは思っていなかったが、今の状況なら何が起きても不思議ではない。
ここは飛香の知らない異世界なのだから。
「ナギ、抜け駆けは卑怯だろ。俺も交ぜてよ」
「ッやめろ!!」
詰め寄ってくるユーリスを威嚇して振り払った飛香は、逃げ道を探して部屋を見回した。
このままここにいては危険だと、頭が警報を鳴らしていた。
「……甘い……ニオイ……」
「なっ!?」
逃げ出そうとしていた飛香の腕を掴んだの、今まで動こうとしなかったサワだった。
血の香りに誘われたのか、うわ言のように「甘い」と繰り返している。
その様は血に取り憑かれたヴァンパイアそのもので、飛香は掴まれた腕を振り払うと慌てて首筋の傷を隠した。
半信半疑だったヴァンパイアの存在が、飛香の中で確かなものへと変わっていく。
それは恐怖以外のなにものでもなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
29 / 74