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逃げるように後退していた飛香の背中に大きくて冷たい感触がぶつかる。
振り返ると、頭一つ分背の高いハオが物静かに飛香を見降ろしていた。
血の匂いを嗅いだらしく、赤い瞳に力が灯る。
「…………!!」
気が付けば、逃げるようにしてその場から走り出していた。
ウィルの呼び止める声を無視して廊下へと飛び出す。
そこに期待していた出口はなく、飛香は窓を探して廊下を駆けた。
(クソッ、こんな事なら外にいるときに逃げ出してればよかった!)
気持ちに余裕がなかったせいもあり、飛香は出口までの道のりを覚えていなかった。
何度か廊下の角を曲がったことは覚えているが、思っていた以上にこの邸は広いらしく、すでに方向感覚はない。
地下にいることだけはわかっているのに肝心の階段は一向に見つからず、飛香の表情に焦りが見え始めた、その時。
「ーーーなに探してんだよ」
「っ?!」
耳元で悪魔の囁きが聞こえたかと思うと、次の瞬間には床に叩きつけられていた。
目の前を星が飛び、視線の先に靴の爪先が見える。
うつ伏せに倒れる飛香の上に誰かが馬乗りになり、飛香はうっと息を詰まらせた。
「ぐっ…ゲホ」
「なーに、逃げてんだよ。殺すぞ」
ナギは飛香の両腕の動きを防ぐと、羽交い締めにして床に縫い付けた。
息もしづらい上に身動きまでとれなくなり、抵抗すると尻を叩かれ、屈辱で目の前が真っ赤に染まる。
ナギの力は尋常じゃなく、どれだけ飛香が下で暴れようとビクともしなかった。
「ただの人間が、ヴァンパイアに敵うわけねえだろ」
「くっ…どけよ!!」
「暴れんなっつーの。うっかり殺っちまいそうになるだろうが」
「知るかよ…!いいから…どけ、よ!!」
「どかねえよ。俺はおまえの血が気に入ったんだ。だからーーー逃がさねえ」
「痛ッ…ぅ…!?」
ナギが耳元で囁いたかと思うと、次の瞬間には同じ場所に噛み付かれていた。
牙が食い込む痛みと共に、甘く痺れるような感覚が脳を侵す。
(また、この感じだ……。痛いはずなのに。噛まれたところが堪らなく疼いて、熱い)
未知の感覚に身体がついていかず、飛香は腕の関節が軋むのも気にせずがむしゃらに暴れた。
「も、嫌だっ…離せぇ…!!」
「……っ…何だコレ。すげぇ…」
「…ざけんなッ…離せ、よ…!!」
「っ甘くて…止まんねえ」
「……ッ」
再び噛み付かれ、飛香は息を飲んだ。
急激に血を抜かれているからなのか、意識が朦朧としていく。
「……っ…いい事思い付いた」
「ぅ…!?」
「おまえ、毎日俺に血を吸わせるならここに置いてやってもいいぜ。どうせ行く当てもないんだろ?」
「っ誰が…!絶対断る!!」
「ふん、そうかよ。でもな……おまえに選択肢はねえんだよ」
「ぅあ!やめ…っ」
今度は耳朶に噛み付かれ、悲鳴に近い声が漏れる。
自分の反応が一々癪で、飛香は唇を噛み締めた。
痛みと恐怖しかないはずのこの行為に、チラつく快楽が飛香を戸惑わせる。
低く嘲笑うような声を耳に残して飛香は意識を手放した。
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