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「君は疲労と貧血で倒れたのだけれど、覚えているかな?」
「あ、あいつ…!」
「アレにはきつ〜く言っておいたから安心しておくれ。今頃、懲罰房で反省しているのだよ」
「…っ…俺、帰る」
ベッドから立ち上がろうとした飛香の肩を慌てて押さえ、ノエルは困ったように眉を下げた。
「まだ安静にしていないと駄目なのだよ。今の君は身体的にも精神的にもかなり疲弊している。回復するまで絶対に部屋から出さないのだよ」
振り払ってしまおうと身構えた飛香だが、必死に訴えるノエルから毒気を抜かれ、やんわりとベッドに沈んだ。
純粋に自分を心配してくれている気持ちが伝わり、少しだけ警戒を解く。
大人しくなった飛香を見て安心したのか、ノエルはほっと息を撫で下ろした。
「着替えを持ってきたから、ここに置いておくのだよ。喉は渇いていないかい?」
「……大丈夫。ありがとう」
「ううん。何か必要なものがあれば言っておくれ。すぐに持ってくるよ」
「………………」
甲斐甲斐しく世話をやくノエルを信じきれずに黙っていると、ノエルは何かに勘付いたように瞬きした。
「心配しなくても、僕はヴァンパイアではないからね。間違っても君の血を吸ったりはしないよ」
「えっ?違う、のか?」
ノエルの否定の言葉に、飛香は拍子抜けした声を出した。
人間離れした容姿を持っているし、てっきりヴァンパイアだと思っていたからだ。
(確かに、一人だけ目の色が違う。それに雰囲気も……)
長く美しいエメラルドの髪は神秘的で、金色の瞳は宝石のように綺麗だった。
ヴァンパイアを前にした時のような圧迫感はないが、触れてはいけないものを見ているようで、飛香は目を逸らした。
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