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「…あの、さ。聞きたい事があるんだけど」
「なんだい?」
ノエルがまともに話せる人間だと判断した飛香は、今まで疑問に思っていた事を全てぶちまけた。
帰れないというのは本当なのか。
ここは何処で、彼らは何者なのか。
シキとは、ウイルスとは何なのか。
まくしたてるように話す飛香にノエルは目を丸くしていた。
「ちょ、ちょっと待って!順番に話すから落ち着いておくれよ」
「っ悪い、」
「……まず、君の身に何が起きたのか説明しなくてはね」
顔を伏せたノエルは、何かを思案するように腕を組んだ。
「隣り合った二つの世界が交わる事は、本来ありえないのだけれど、たまに歪が生じる事があってね。恐らく、君はそれに巻き込まれたのだと思う」
「歪…?」
「君の世界とこちらの世界を偶発的に繋げてしまう、異空間のようなものだよ。どうやら一方通行のようだけれど……」
「一方通行って……っ帰る方法、本当にないのか?理屈はわかんねえけど、来れたんなら帰れるんじゃないのか?」
「……残念だけど、意図して歪を作り出す事はできないのだよ。君を元の世界に帰してあげたいけれど、まだ僕たちの技術では不可能なんだ」
「そんな……」
申し訳なさそうに瞳を伏せたノエルを視界から外すと、飛香は呆然と天井を見上げた。
ノエルの態度は至って誠実で、それが事実なのだと痛感させられる。
つまり、飛香が異世界に来てしまったのは事故のようなもので、人工的に異世界を行き来する方法など存在しないのだ。
(覚悟はしてたけど……)
帰れないと実感すると、自然に浮かんでくるのは七海夫妻の顔だった。
だが、七海夫妻には新しい家族がいる。
高校を卒業したら出て行くつもりだったし、それが早まったと思えば帰る事に執着はなかった。
和眞は寂しがるかもしれないが、飛香がいなくても元気でやっていくだろう。
一つ懸念があるとすれば、大樹の事だった。
「誰か大切な人を残してきたのだね」
「え…」
「そんな顔をしているよ」
ノエルに指摘され、飛香は自分の顔を両手で覆った。
確かに大切な人には違いないが、ノエルの言い方には妙なニュアンスが含まれている気がした。
「恋人かい?」
「ち、違うって!大樹は高校の先輩で、友達だよ」
「その友達がどうかしたのかい?何か心配事があるようだけれど」
「……行方不明、なんだ。二ヶ月くらい前に、家族揃ってどっかに消えちゃってさ」
「消えた?」
「俺の世界じゃ、神隠しっていうんだけど」
飛香が神隠しの現象について詳しく話すと、ノエルは興味深そうに目を見開いた。
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