アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
032
-
「……なるほど。白の世界(ヴァイス)ではそんな事が起こっているのだね。異端者が急増している理由がよくわかったよ」
愛らしい顔を苦痛に歪めたノエルは、悩まし気に吐息を漏らした。
「君の世界で地震が多発しているのは、恐らくシキの存在が影響しているのだと思う。黒の世界(シュヴァルツ)が生者と死者のバランスを崩してしまったせいで、歪が生じやすくなっているのだよ」
「な、なんだよ、それ!じゃあ、神隠しって……」
「地震によって引き起こされた歪に、白の世界(ヴァイス)の人間が巻き込まれているのだろうね」
「なッ!?異端者って、向こうで神隠しにあった人間の事なのか!?」
「その推測で、まず間違いないと思うのだよ」
ノエルのはっきりとした声色に、飛香は呆然とするしかなかった。
頭の中が真っ白になるのと同時に、妙な安堵感に包まれる。
(じゃあ、大樹もここに…?)
どれだけ探しても見つけられなくて当然だった。
行方不明者たちが異世界にいるなんて、誰が予想できるだろう。
まさか、自分も神隠しにあっていたなんて思いもしなかったが。
「そっか…。じゃあ、大樹もこっちにいるんだな」
「その可能性は高いだろうね。シェルターの中にいるといいのだけど……」
「え?あっ…」
ヴァンパイアたちに見せられた光景を思い出し、飛香はハッと息を詰まらせた。
シェルターの外はシキで溢れ返っていたはずだ。
飛香は運良く助けられた形になったが、大樹や他の異端者たちが同じとは限らない。
早く探し出さなければ、死んでいるかもしれない。
そう思った瞬間、ぶわっと全身から嫌な汗が噴き出し、目眩がするほどの不安に襲われる。
「…っ探さないと!!」
「あ、アスカくん!?待つのだよ!」
ベッドから飛び降りた飛香を、焦った様子のノエルが追った。
「どこに行くつもりだい?友達が心配なのはわかるけれど、少し落ち着いて……」
「こんな状況で、落ち着いていられるか!やっと、手がかりを掴んだってのに……なのに、じっとしてられるかよ。大樹に何かあってからじゃ遅いんだ!意味ねえんだよ!!」
「………死んでしまうよ」
凛とした冷たい声に思わず息を飲む。
自分よりずっと幼い少年の変化に飛香はたじろいだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
34 / 74