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「いくらなんでも、シェルターの外に一人で飛び出すなんて事は君もしないと思うけれど、一つだけ忠告しておくよ」
飛香が足を止めたのを確認すると、ノエルは悲しそうに表情を曇らせた。
「この世界ではね、異端者は差別される対象なのだよ。運良くシェルターの中に逃げ込めても、役人に見つかれば処刑されてしまう。人間たちに紛れても、バレたら酷い扱いを受けるだろう」
「なっ!?」
ノエルの言葉に衝撃を受け、飛香は言葉を失った。
何を言っているんだ、と目で訴える。
なんとか絞り出した声は、不安で震えてしまっていた。
「なん、で」
「異端者を脅威だと、人間たちが判断したからなのだよ。自分たちとは違う知識、違う文化、違う武器。そんなものを安易に放置できないだろう?」
「そんな……滅茶苦茶だッ!好きでこんな世界来たわけじゃねえのに、何で殺されなくちゃならないんだよ!?」
「怒るのも無理はない。君の言い分は正しい。だけど……これが現実だよ」
深い悲しみを携えた瞳が飛香を映す。
信じ難い現実に、飛香は目の前が暗くなっていくのを感じた。
不安や恐怖、苛立ち。
様々な感情が渦巻くなか、強烈な孤独感に押しつぶされそうになる。
途端に、ぐらりと揺れる視界。
立ちくらみを起こした飛香は、ノエルに支えられてなんとか踏み止まった。
「……っ」
「大丈夫かい?早く横になった方が……」
「……いい。軽い貧血だから」
「でも……」
「いいって言ってんだろ!!」
叫んでからハッとして、飛香は振り返った。
目が合うと控えめに微笑んだノエルに罰が悪くなる。
(ノエルが悪いわけじゃないのに、俺……)
自分より小さな子供の前で取り乱した事が恥ずかしくなり、飛香は誤魔化すようにエメラルド色の頭に手を置いた。
「へ?あ、アスカくんっ?」
「あ…ごめん、つい。嫌か?」
「嫌というわけではないのだけれど……」
飛香が頭を撫でると、ノエルは複雑そうな顔で口を噤んだ。
戸惑っている気配はしたが嫌がる素振りはなく、飛香はそのままノエルの頭を撫で続けた。
「……怒鳴って、悪かった。俺を心配してくれたんだよな。ありがとう」
「う、うん…」
ほんのりと頬を赤らめたノエルの反応に安心していると、扉の隙間から「ゴホン!」と咳払いが聞こえて飛香は顔を上げた。
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