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「ほ〜う?こりゃまた、珍しいもん見ちまったなぁ」
「ぎゃ!イヴァン!?い、いつの間に……」
男の登場で更に顔を赤くしたノエルは、焦ったように飛香から飛び退いた。
ニヤニヤと口元を緩めた体格のいい男が、くすんだ金髪を掻き上げて部屋に入ってくる。
どうやら二人は知り合いらしく、ノエルは怪訝そうに男を睨みつけた。
「覗き見なんて趣味が悪いのだよ!」
「騒ぎ声が聞こえたんで様子見に来てやっただけだぞ、俺は」
「うぅ…」
焦るノエルを楽しそうに一瞥した後、飛香の前に立ったイヴァンはすっと太い腕を差し出した。
「お前さんがアスカだな?」
「そうですけど…」
「俺はイヴァンだ。ここでヴァンパイアの纏め役をしてる」
「えっ?ヴァンパイア、ですか?」
「おっと、そんなに警戒するな。俺は人間だぞ」
差し出された手を握り返そうとして固まった飛香に、イヴァンは両手を挙げて苦笑した。
厳つい見た目とは違い、柔らかい雰囲気のイヴァンに警戒が解ける。
二メートル違い巨体を見上げ、飛香は疑問を投げかけた。
「普通の人間なのに……ヴァンパイアと知り合いなんですか?」
「奴らは俺の仕事仲間だ。シキの討伐を目的とした組織を組んでてな。奴らはそのメンバーなんだよ」
「シキの討伐って……そんな仕事あるんですか?」
「ああ。なかなか需要あるんだぞ?」
ニヤッと悪戯っぽく笑ったイヴァンは飛香の肩を叩いた。
「どうだ、お前も入ってみるか?」
「えっ」
「イヴァン!冗談は顔だけにするのだよ」
とんでもないことを言い出したイヴァンにノエルが声を尖らせる。
イヴァンは頭を掻くと、悪びれていない様子で再度飛香の肩を叩いた。
「おいおい、ヒデェ言い草だなぁ。別に戦力に加われとは言ってねえぞ。他にも色々と使い道はあるだろう。雑用とか、……雑用とか」
(この人、雑用しか言ってない…)
他に何も思いつかないのか、腕を組んで唸り始めたイヴァンをノエルが呆れたように一瞥した。
「反対するわけではないけれど、ここには《彼ら》もいるのだよ?」
ノエルが意味ありげに強調した《彼ら》とは、恐らくヴァンパイアのことだろう。
少し考える素振りを見せた後、イヴァンは肩を竦めた。
「けどよ、このまま放り出すわけにもいかねえだろうが」
「むぅ…」
「どうせ行く当てもないんだろう?だったらいいじゃねえか。なあ?」
「え、えっ?」
同意を求めるように肩を組まれ、返答に迷う。
どうやら飛香の身の振り方が決まったようだった。
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