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「とにかく、だ。早いとこ体調治してくれよ。任せたい仕事が溜まってるんだ」
飛香を強引にベッドに座らせたイヴァンは、遠い目をして腕を組んだ。
その仕草に嫌な予感を覚え、恐る恐る問いかける。
「どんな仕事ですか?」
「そうだな……まずは、この邸の掃除係ってのはどうだ?」
「そんなんでいいんですか?」
「おいおい、どんだけ広いと思ってんだ。床磨きだけでも三日はかかるぞ?」
「え"……」
「それに、あいつらの散らかしようと言ったら……」
眉間に皺を寄せたイヴァンは、疲れたように項垂れた。
「あいつらの生活態度にはいい加減、ウンザリしてるんだ。俺がどんだけ注意しても聞きやしねえ。誰の家だと思ってんだ、ったく…」
「そんなに酷いんですか…?」
「三日も放置してみろ。……悲惨だぞ」
イヴァンの言い草に、ノエルが同意するように頷いた。
物を破壊するナギ。
吐いたガムを放置するウィル。
食べ散らかしたまま片付けないサワ。
ハオやユーリスは自分のスペースが綺麗ならお構いなし。
次々と説明された内容は、ヴァンパイアたちの自分勝手な行動だった。
「連中は俺の家をゴミ屋敷にしたいらしい。おかげで仕事にも集中できん有様だ。疲れて帰ったらまず、壊れた壁が目に入るからな」
「はは、なるほど…」
初めて見た時のナギの様子を思い出し、飛香は頬を引きつらせた。
あの時は装飾棚を蹴り倒していたが、それが日常茶飯事だったとは。
(ようするに、本当に雑用なんだな)
自分のするべき仕事内容を頭に入れて、飛香は少しだけ安堵した。
思っていたより大変な作業かもしれないが、できない仕事ではない。
ヴァンパイアと同じ空間で過ごす事に懸念はあるが、飛香は改めて自分の幸運を感じていた。
異端者に優しくないこの世界で、生き抜く方法を見つけたのは奇跡に近いだろう。
ほとんどの異端者たちがシキに襲われるか、役人に捕まってしまうのだから。
(大樹……絶対、生きてるよな)
大樹とその家族の無事を祈り、飛香は異世界やってきて一日目の夜を過ごした。
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