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「………?」
二階に登りきったところで、ふと廊下の奥から話し声が聞こえてきて大樹は足を止めた。
薄く開いた扉から微かに光りが漏れている。
大地の部屋だった。
「…………、……」
「……ぃ……」
囁くような声に、大樹は眉を潜めた。
玲子は一階にいるはずで、大地の独り言かと耳を疑う。
不審に思って部屋を覗いた瞬間、白い影が大樹の頭上を飛び越えた。
「うわッ!?」
驚いて腰を抜かした大樹は慌てて背後を振り返った。
ヒラヒラと床に落ちる紙に釘付けになる。
部屋の窓を見ると、カーテンが風で揺れていた。
(なんだ…風で飛ばされてきたのか)
見覚えのある絵柄の紙を拾うと、大樹は部屋の机にそれを置いた。
ズラッと並べられた狼の絵を訝しげに見つめる。
最近になって唐突に描くようになった狼の絵に、大樹は妙な胸騒ぎを感じていた。
(そういや、この絵を描くようになってからだな。大地の容体が回復したのは……)
寝息をたてる大地を見下ろし、そっと頭を撫でる。
起きる気配のない大地を見て、やはり気のせいだったのかと大樹は部屋を後にした。
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