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「いや!!大地ッ、大地…!!」
玄関に足を踏み入れようとした瞬間、叫ぶような声に大樹はハッとした。
慌てて靴を脱ぎ捨てると、声のするリビングへ走り寄る。
「母さん!?」
叫んでいたのは玲子だった。
ソファに沈む小さな身体を揺らしながら、目尻に涙を溜めている。
大樹に気付いた玲子はハッと振り向くと、溜めていた涙を拭った。
「大樹…っ、大地が、大地が目を覚まさないの!!」
「!?」
ソファに横になった大地に駆け寄り、脈を確認する。
息はしているが、これだけ呼んでも起きないのは様子が変だった。
「一体何が……!?」
「突然、放心状態になって、それから気を失ったのよ……うわ言みたいに、呼んでる、行かなきゃって……」
「呼んでるって、誰が!?」
「わからないわよ、そんなの!もうっ、一体どうなってるの…!?治ったんじゃなかったの…っ!?」
「母さん、落ち着いて!きっと大丈夫だから…!」
パニックを起こす玲子を宥めると、大樹は携帯を探して鞄を漁った。
とにかく病院に連絡しようと焦っていると、突然声が降ってくる。
『助けたいか?』
「ッ!?」
突然聞こえた声に驚いた大樹は、携帯を取り落とした。
まるで、頭に直接響いてるような感覚に息を飲む。
ゾッとするほど綺麗な女の声だった。
「誰だ!!」
驚いて声を張り上げるが、周りには誰もいない。
隣にいる玲子は目を丸くして、戸惑っていた。
「大樹…?」
「母さん、今の声聞こえたか?誰かいる」
「声?ちょっと、何言ってるの?」
「聞こえたんだよ、声が!」
「っやめてよ!!こんな時に、アンタまで変な事言わないで…!」
叫ぶように耳を塞がれ、大樹は困惑した。
確かにハッキリと聞こえた声に、玲子は気付いていないようだった。
『無駄だ。私の声はお前にしか聞こえない』
「…!?」
『もう一度問おう。……弟を助けたいか?』
「な、に?どういう意味……、!?」
問いかけるより前に、地面が激しく揺れ始め、大樹はバランスを崩した。
家具やテレビが倒れるほど大きな地震に目を見開く。
「きゃあ!!」
「母さん!?」
「わ、私はいいから…大地をお願い…!!」
「っわかった!!」
床にへばりつく玲子を横目に、ソファから大地の身体を離すと、大樹は庇うように抱きしめた。
近くにいた玲子に手を伸ばすが、歪む視界。
「母さん!!」
「大樹!!大地ーーーっ!!」
膝を崩した瞬間に、玲子は屈折した空間に飲み込まれて消えた。
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