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一瞬の出来事だった。
訳がわからず混乱していると、次第にハッキリとしてくる視界。
気が付けば、大樹は地面に横たわっていた。
ゆっくりと瞬き、穴の開いた天井を見つめる。
呆然としたまま起き上がると、後ろ髪からボロボロと土埃が落ちた。
「一体何が起きたんだ…?」
穴から射し込む光りが眩しくて、目を細める。
石造りの古い建物らしく、記憶にない場所だった。
瞬間、ぞくりと背筋を駆け巡る悪寒。
「う…ぐ、」
こみ上げてくる胃液をなんとか抑え、大樹は背を丸くした。
すると、すぐ側で横たわる大地が視界に映る。
「大地…!!」
「………………」
「よかった…」
怪我のない大地を見た大樹は、安心したように息を吐き出した。
そして、ハッと思い出したように立ち上がる。
奇妙に歪んだ空間に吸い込まれていった玲子が大樹の脳裏に焼きついていた。
「母さん!!何処だ!?母さん…!!」
どれだけ呼んでも返事はなく、薄暗さに慣れた目で周りを確認すると、妙なものを見つけて息を飲む。
不思議な文字と模様が描かれた壁は、まるで古い遺跡を連想させた。
「ここは……」
「ようこそ、我らの城へ」
聞き覚えのあるひやりとした声に、大樹は背筋を凍らせた。
ゆっくりと振り向くと、暗闇の中からフードを被った妙な格好の女が現れる。
両目を包帯で覆い、黒いローブを引きずった女に不気味なオーラを感じた大樹は、慌てて大地を抱き起こした。
「大地!起きろ!!大地!!」
「……無駄な事を。彼は起きぬよ」
「!?」
いつの間か背後に回った女は、大樹の耳元で囁くように言葉を紡ぐ。
「これは代償なのだ。不思議に思わなかったのか?死の淵にいたはずの弟が、健康な身体を手に入れていることに、疑問を抱かなかったのか」
「………!!お前の仕業なのか…?さっきの頭に響く声も……」
「そうだ」
「っ大地に何をした!?母さんは何処だ!!」
「あの女の事は忘れろ。もはや助かるまい」
「なん、だと…!?」
掴みかかろうとした大樹をひらりと躱した女は、おかしそうに喉の奥を鳴らした。
「おまけでついてきた女の事など知らぬ。ただ、このままだとお前の弟は永遠に目を覚まさんぞ」
「なっ!?」
「愛しい弟を救う術が知りたいか?」
不敵に微笑む女の姿に得体の知れない威圧感を感じて、大樹は汗ばんだ。
色んな事が頭の中で絡み合い、思考を混乱させる。
だが目の前の女は全て見通していたかのように落ち着いた様子だった。
一体何者なんだと警戒していると、大樹の思考を読んだように女は口の端を吊り上げて答えた。
「我が名はエルレイン。古の魔女也」
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