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大広間の奥にある部屋に入ると、装飾された棚に高そうな食器がずらりと並んでいるのが視界に映る。
だが使用されている気配はなく、冷蔵庫に手をかけた飛香はぎょっと目を見開いた。
中身を埋め尽くす赤い物体に血の気が引いていく。
(これって…まさか)
びっしりと並べられていたのは、輸血の時などに使用される血液パックというやつだった。
こういうのを目の当たりにすると、ここがヴァンパイアの根城なんだと嫌でも思い知らされる。
他にも食材らしきものが冷やされていたが、見たこともない模様に飛香は手を引っ込めた。
「これって…卵、か?」
ドアポケットに卵の形をした黒い物体を見つけ、手にとってみる。
色はさて置き、感触は卵そのものだった。
「食えんのかよ、これ……」
半信半疑だったが他に手をつけられそうな食材がなく、飛香は仕方なく卵を取り出した。
匂いを嗅いだり、口に含んでみたりと食べられそうなものを揃えていく。
牛乳と砂糖と冷凍されたパンを見つけ、飛香は作れそうなものを考えた。
(これだけだと作れるもん限られてくるよな…)
ワインや大量の菓子類はあるものの、これではキッチンの持ち腐れだ。
主食が人間の血であるヴァンパイアには必要ないのかもしれないが。
気を取り直した飛香は、木製の容器を取り出すと材料を放り込んだ。
大雑把に作業を進めていると、ふと大樹の事を思い出す。
(大樹なら、もっと丁寧にやるんだろうな…)
卵の殻を摘み出し、自分の不器用さに苦笑する。
簡単なものを適当に作る飛香と違って、大樹の料理は本格的なものが多かった。
母親の負担を減らすために始めた事だったらしいが、その外見とのギャップに大笑いしたことがある。
いつも持参していた弁当のタコウインナーを大樹が作っていたかと思うと、飛香は笑わずにはいられなかった。
(大樹……絶対見つけてやるからな)
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