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「じゃあ次の露店行こうぜ。飛香には肉食べて血増やしてもらわねーと」
「あ、ああ…」
ウィルの皮肉に返す言葉も見つからず、飛香は力なく頷いた。
見間違いだったのかと疑うほどウィルの様子に変化はない。
飛香は腑に落ちないまま買ったものを受け取ると、次の露店を探すウィルの隣に並んだ。
必要なものを挙げるとキリがなく、食材だけでなく服や靴まで買い揃えた頃には結構な時間が経っていた。
そこまでする必要はないと飛香が言っても、毎日同じ服で目の前をウロついて欲しくないというウィルの意見に逆らえず、結局下着まで買うことになった。
サワは相変わらず飛香にべったりで、側を離れる気配はない。
コンタクトに違和感があるのか、嫌そうに瞼を擦る姿は見た目よりずっと幼く見える。
そして時折、露店に置いてあるものを勝手に口の中に入れては問題を起こした。
選ぶのは全て甘いもので、好物なのだとわかる。
目立たずに事を進めたがっていたウィルは、わなわなと震えた。
「だーかーら!勝手に食うなって言ってんだろ!?欲しかったら買うんだよ!」
「お金、持ってきてない」
「だったら我慢しろよ」
「……やだ」
「はあぁ!?テメ、ふざけんな!!」
「だってお腹空いたんだもん」
「だもん、じゃねーよ!キモい!おい飼い主、何か言ってやれッ」
「……俺?」
怒り心頭なウィルに指を突きつけられ、飛香は思わず聞き返した。
飼い主になった覚えがないからだ。
ウィルが言っても聞かないなら自分など論外だろうと思ったが、有無を言わせないウィルの視線に耐えられなくなった飛香はサワと向き合った。
「お腹空いてるのか?」
「…うん」
「甘いもん好きなんだよな。後で何か作ってやるから、今は我慢しろよ」
「ホント?」
「ああ」
「わかった。我慢する」
意外にもサワはすんなりと従ってくれて、飛香は拍子抜けした。
もっと目を丸くしていたのはウィルだが、もう諦めに近いのか、呆れるように首を振った。
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