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必要なものは買い揃え、そろそろ帰ろうとしていたその時、喚くような怒鳴り声が飛香の耳に入ってきた。
気になって周りを見回すと、少し離れた建物の影で数人がざわついているのが見える。
一人を取り囲むように輪になっていて、声を張り上げたのは周りの人間だった。
「ここじゃよくある光景だ。ほら、行こう」
面倒そうに眉を寄せたウィルは、飛香の腕を引いてその場を去ろうとしたが、騒ぎの中心に見知った顔を見つけて思わず声に出してしまう。
「ゲッ。ナギ…」
「え?」
ナギ、と聞いて飛香は再び建物を振り返った。
怒鳴り散らす男達の中心に赤い髪を見つけ、あっと声を漏らす。
物騒な連中に囲まれていたのはあのナギだった。
「あいつ、懲罰房から抜け出して、また面倒な事を…」
「助けなくていいのか?あれって結構ヤバい状況だろ」
「ああ、いいのいいの。どっちかっつーと、あの人間達の方が俺は心配だね」
ナギが負けると思っていないのか、ウィルは余裕の笑みを浮かべている。
ヤバくなったら止める気がらしく、様子を伺っているウィルの横で飛香も声を潜めた。
どう見ても不利な状況で、ナギが口の端を吊り上げたのが見える。
それを発端に周りの男達が殴りかかるが、ひらりと躱すナギの動きには無駄がなかった。
軽くダンスでもするみたいに脚技を繰り出すと、男達の身体は嘘みたいに吹っ飛んだ。
「すっげ…」
「だから言っただろ。素手の人間がヴァンパイアに敵うわけねーんだよ」
「でも、ナイフ持ってるの、いるよ」
「え、どこに!?」
倒れた男の一人が鋭利な刃物を持って起き上がるところをサワは指差した。
ぎょっとウィルの顔が強張る。
「うわーヤバいって!あんな事したらあいつナギに殺される!」
「え、そっち?」
状況的に全く逆の相手を心配するウィルに飛香は目を丸くした。
「ナギは自分に向かって来るヤツに容赦ない。ナイフなんか使ったら、殺してくれって言ってるようなもんだ」
「で、でもヴァンパイアは人間に危害を加えると死刑になるんだろ?まさか殺したりは…」
「わかんねえけど、あの様子だとちょっとヤバいかも」
男を視界に入れたナギの雰囲気がガラリと変わった。
それまでチラつかせていた余裕は消え去り、物凄い怒気が伝わってくる。
赤い瞳がギラつくのを見て、男がたじろぐのが見えた。
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