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渋るサワを引き剥がし、ウィルから荷物を受け取った飛香は、宛てがわれた部屋に戻った。
そして、少し躊躇してから「ただいま」と呟く。
ここが帰るべき家だと認めるのはかなりの抵抗があったが、飛香は割り切って考える事にしていた。
元の世界に帰るまでの仮の住まいだと思えば、快適に過ごせる気がしたからだ。
(もう嘆くのは止めだ。少しでもここの生活に慣れないと…)
大樹を探し出すためにも、いつまでも消極的でいるわけにはいかないだろう。
今は出来ることから始めようと意気込んでいた、その時。
「よぉ、遅かったな」
「え、…っ?!」
突然背後から伸びてきた腕に引き寄せられ、飛香は荷物を床に散らかした。
勢いに任せて引き倒され、後ろで腕を拘束される。
机に上半身を押し付けられた状態で無理矢理頭を捻ると、そこには知っている顔があった。
「待ちくたびれたぜ」
「なッ!?」
部屋で待ち構えていたのはナギだった。
暴れようとすると、体重をかけられ身動きがとれなくなる。
デジャヴのような光景に、飛香は焦燥を募らせた。
「ふざけんな!やめろ!」
「黙れよ。腕へし折られたくねえだろうが」
「……!!何の、用だよ」
無理な体制でキッと睨み付ければ、ナギの瞳に光りが宿る。
まるで反抗するのを見て楽しんでいるようで、飛香は唇を噛み締めた。
力ではどうしても敵わない。
それが酷く飛香のプライドを傷付けた。
「俺は確かめに来ただけだ」
「は…?何を」
「………………」
黙ってしまったナギを不信に思った飛香は、少しの間だけ様子を伺った。
すると、何かに耐えるような息遣いが聞こえてくる。
首を捻ると、ナギが熱っぽい表情で飛香を見下ろしていた。
不覚にもドキッとしてしまった飛香は、獣のようなギラついた眼差しに凍り付く。
「お前の血を飲んでから、身体が変だ。すげえ力がみなぎってきて……時間が経つと、もっと欲しくなる。他の奴じゃダメだった。お前の血じゃねえと…」
「え…?」
「足りねえんだよ…全然。渇いて、渇いて…しょうがねえんだ」
「あ、待…っ」
噛み付かれると思った飛香は、咄嗟に目を瞑った。
だが来るはずの衝撃は一向にやってこず、恐る恐る首を捻る。
ナギの行動を止めたのは、ユーリスだった。
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