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「おや?そこにいるのはアスカくんかい?」
「!ノエル」
サワをどかすのに四苦八苦していると、通りすがりのノエルに声をかけられ、飛香は嬉しそうに声色を上げた。
この邸で唯一まともだと思える人物の登場に、ほっと胸を撫で下ろす。
「えっと……この状況は?」
「なんか、妙に懐かれて…」
「ふむふむ。サワくんがねぇ。珍しい事もあるのだね」
「他の奴らも言ってたけど、そんなに珍しい事なのか?」
「僕が知る限りでは、サワくんが人間に興味を示した事は今まで一度もないのだよ。それを考えると、この光景は少し妙なものかもしれないね」
「そうなんだ…」
ただのフレンチトーストでここまで懐かれるとは思わず、飛香は首に絡みつくサワをまじまじと見つめた。
すると、チュッと響くリップ音。
唇に柔らかい感触を残し、金色の髪が離れていく。
硬直する飛香より早く反応したのはノエルだった。
「な、何をやっているのだよ!サワくん!」
「……?舐めただけ」
「ななな、何で!!」
「だって美味しそうだったから…」
「アスカくんは食べ物ではないのだよ!?」
必死に狼狽えるノエルを他所に、当の本人は意味がわかっていないようだった。
「アスカ、甘い匂いがする。すごく美味しそう…」
飛香の首筋に鼻先をすり寄せたサワは、うっとりと頬をほこらばせた。
ヴァンパイアとして血の香りに惹き寄せられただけで、他意はないと考えた飛香は、動揺する気持ちを落ち着かせた。
(大丈夫。犬に舐められたと思えばこんなの何てことない、うん)
ユーリスにされた事を考えると、サワのした事など可愛いものだった。
もう二度と許す気はないが。
これ以上、男との免疫をつけてたまるかと飛香は嫌な思考を振り払った。
「ごめんね、アスカくん。サワくんには僕からも注意しておくから」
「あーうん。もういいよ。何か犬みたいで慣れたし」
「犬、かい?ふふ、ヴァンパイアをそんな風に扱えるのはアスカくんだけだろうね」
「サワ限定だけどな。他はホント、何考えてんのかさっぱり…」
眉間に皺を寄せた飛香を、ノエルが心配そうに覗き込んでくる。
「聞いたよ。彼らと取り引きをしたらしいね。君の友人探しを手伝う代わりに、血を差し出す契約をしたとか……」
「ああ…」
「…いいのかい?あんなに苦手意識を持っていたのに…」
ノエルに心配そうに見つめられ、飛香は乾いた笑みを浮かべた。
昨夜の事を考えると、全く後悔していないわけではない。
だが、大樹のためを想うと仕方ない事だと割り切っていた。
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