アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
066
-
「本当なら僕が行くべきなのだけれど、イヴァンの仕事について行く約束があってね。後はハオくんに任せるのだよ」
「………………はぁ」
面倒事を押し付けられたハオは不機嫌そうに眉を寄せていたが、やがて諦めたように溜め息を吐いた。
それを同意と受け取ったノエルは、話を進めていく。
どうやらハオに一人で行かせるつもりらしく、飛香は慌てて引き止めた。
「待てよ、俺も行くから」
「え?でも…」
「誰かに任せっきりで大人しくしてられるかよ。それに、大樹の顔を知ってるのは俺だけだ」
「それは…そうだけれど」
「異端者だってバレなきゃいいんだろ?悪いけど、これだけは譲れない」
せっかく手に入れた情報を前にして、じっとしていることなど飛香にはできなかった。
酷い扱いを受けているかもしれないと思うと、居ても立ってもいられなくなる。
大樹の無事を確認するまで、飛香は引き下がるつもりはなかった。
「……いいんじゃないですか?一目で判断できるならそれに越したことはない。舌を切られていたり聴覚を奪われていた場合、他に確認のしようがないですから」
「なッ…!?」
不穏な言葉を並べるハオに、飛香はゾッと背筋を凍らせた。
一瞬だけ大樹のそんな姿を想像してしまい、全身から血の気が引いていく。
そんな飛香を庇うように、ノエルがハオを睨むように見上げた。
「ハオくん、あまり彼の不安を煽るような発言はやめるのだよ」
「はいはい…」
「だけど…確かにハオくんの言う事も一理ある。アスカくんを連れて行くのが一番手っ取り早い方法だろうね」
「!じゃあ」
「ただ、脅すわけではないけれど……君は友人のどんな姿を見ても、冷静でいられるかい?」
「え…」
今までにないノエルの真剣な表情に、飛香はごくりの唾を飲み込んだ。
「今回はあくまでも確認が目的なのだよ。例え君の友人が捕らわれていたとしても、すぐに助け出す事はできない。奴隷は貴族の所有物として扱われるから、下手に手出しをすると僕たちが罰せられてしまうからね」
「そんな…!じゃあ、どうすれば」
「確実に救い出す方法を考えるためにも、君は平静を装う必要がある。友人がどんなに酷い扱いを受けていたとしてもだよ」
「……!」
「それが出来ないなら、悪いけれど行かせるわけにはいかないのだよ」
キッパリと言い切られ、飛香は拳を握り締めた。
ノエルの言い分はわかるが、実際に大樹を目の前にしたら冷静でいられるか、飛香には自信がなかった。
大樹の状態によっては、貴族とやらをぶん殴ってしまうかもしれない。
だが、それでは助ける事が出来ないとノエルは言っているのだろう。
どうしても大樹の姿を自分の目で確かめたかった飛香は、小さく頷くことしかできなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
68 / 74