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ひたすら歩き続けて数十分、飛香は初めて上流階級の住む地区へと足を踏み入れた。
邸の付近とまるで違う景色に、ただただ驚かされる。
白を基調とした豪勢な住宅街は、鬱蒼としたスラム街とはまるで雰囲気が違った。
すれ違う人々の服装は中世ヨーロッパの貴族のようで、女はフリルやレースの細やかなドレスを身に纏い、男は編み上げブーツにタキシードを派手にしたような服装で優雅に歩いていた。
「何してんですか。置いて行きますよ」
「!ま、待てってば」
「早くしてください。こんな場所、一秒だって長居したくないんです」
前を歩くハオに鬱陶しそうに吐き捨てられ、飛香は慌てて歩幅を合わせた。
結局同行することになったものの、二人きりの状況は気まずく、苦し紛れに疑問をぶつけてみる。
「何でだよ。こんなに綺麗な景色なのに」
「住んでる連中が問題なんですよ」
「貴族ってやつか?そいつらの何が問題なんだ?」
「…本当に何も知らないんですね」
不機嫌そうに声のトーンを落としたハオに、飛香はドキリとした。
蔑むような眼差しを向けられ、身体が凍り付く。
それでも恐る恐る説明を求めると、ハオは面倒そうに口を開いた。
「貴族とは政府の次に権力を持つ支配者の事です。シェルターや街を築き上げたのも、彼らの富があったからこそ。この国で貴族に逆らう事は、命を投げ出す事に等しいんですよ」
「つまり……金を持った質の悪い権力者ってことか?」
「…大まかに言うと、そういうことです」
飛香の簡単な解釈に、ハオは呆れたように肩を竦めた。
そして飛香を見降ろすと、不意に声を潜める。
「今から訪れる貴族の名は、マティアス・フレグニール。珍しい物を集めるコレクターで有名です。貴方もその中に加わりたくないなら、異端者であることは黙っていてください」
「お、俺から言いふらすわけないだろ!」
「気に入られてしまえば同じですよ。くれぐれも用心してください。私欲のためならどんな汚い手でも使う連中です」
「…!」
冷たく言い放ったハオは、そのまま何事もなかったかのように歩いていく。
話しかけ辛いオーラを放つハオに気後れしながら、飛香は無言で歩き続けた。
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