アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
068
-
やがて青い屋根の豪勢な邸の前で立ち止まると、ハオは念を押すように飛香を振り返った。
「着いて来るのはいいですが、大人しくしていてください。貴族は気難しい連中ですから機嫌を損ねると大変なんです」
「わ、わかったよ」
ハオの斜め後ろに控えると、飛香はそびえ立つ豪邸を睨み付けた。
この中に大樹がいるかもしれないと思ったら、早く押し入りたい衝動に駆られる。
そんな飛香を諌めると、ハオは妙な事を言い出した。
「今から貴方は俺の性奴隷です」
「せっ…はあ!?」
「そういう設定って事ですよ。いちいち反応しないでください」
「うぐっ」
「俺が許可を出すまで喋る事は禁止します。勝手な行動も許さない。いいですね?」
「なっ……」
「…………………」
「………………わかった」
有無を言わせないハオの態度に気圧され、飛香は素直に頷いた。
ハオという男は時々妙な威圧感を醸し出すから厄介だ。
納得はできなかったが「保険だ」とハオに言われてしまい、仕方なく後ろを着いて行く。
(男相手に性奴隷って……もう何から指摘すればいいのか)
ハオの突拍子もない発言に勢いを削がれた飛香は、複雑な心境で扉の前に立った。
改めて緊張を走らせる飛香の横で、ハオが扉の金具を使いノックする。
暫くすると執事のような格好をした老紳士が現れ、ハオが何かを耳打ちすると、執事は頭を下げてハオと飛香を中に招き入れた。
「こちらの部屋でお待ちください。主人を呼んで参ります」
客間のような場所に案内されると、執事はすぐに部屋を出て行った。
静まり返った部屋の中を見渡してみる。
いかにも高そうな絵や壺が飾られた高級感のあるアンティーク調の部屋だった。
飛香が落ち着きなく周りを見ていると、ハオが呆れたように冷たい一瞥を投げかけてくる。
眼差しだけでジッとしていろと訴えられ、飛香は仕方なく大人しくなった。
暫くそうして待っていると、客間に一人の男が顔を出した。
金髪にウェーブのかかったロン毛のまだ若い青年は、ハオを視界に入れると嬉しそうに瞳を輝かせる。
(こいつが貴族…?思ってたより若いな)
見るからに金持ちの坊ちゃんという容姿の男を飛香が観察していると、ハオが見たこともないような完璧な笑みを貼り付けて一礼した。
「お久しぶりです、フレグニール様」
「あれー?ハオじゃないか。ご無沙汰だね」
「はい。お元気そうでなによりです」
マティアスに対してにこやかに微笑むハオに飛香はぎょっとした。
(なっ…こいつ同一人物か?)
普段の冷たい印象は一変して、爽やかさすら感じる笑顔を振り撒くハオに、飛香は呆気にとられた。
あれだけ嫌悪感を振りまいていた相手へこれだけ違う態度がとれるものかと感心してしまう。
思わず凝視していると、ハオに無言の眼差しで威圧され、飛香は慌てて視線を逸らした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
70 / 74