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「この伝説の生き物を探し出すのに、ほんと苦労したよぉ。まさか生きてるホンモノが手に入るとは思ってもみなかったけど。探してみるものだね」
マティアスは嬉しそうに頬を褒めると、うっとりと恋人に話しかけるように狼について語り出した。
「狼は昔から神秘的な存在として崇められてきた。個体差はあるようだけど、魔女に並ぶ強い力を持つという……僕はこの狼にどんな力があるのか知りたい!!……でもねぇ、なかなか懐いてくれなくて困ってるんだ」
「グゥルルル…」
マティアスが哀し気に檻の周りを歩くと、それに反応するように狼が威嚇し始めた。
牙を剥き出しにして唸る姿は子供ながらに迫力があり、引け腰の飛香はマティアスの様子が変化しつつある事に気付かない。
次第に不穏な空気が流れ始めたことに気付いたハオが、それとなくフォローに入る。
「狼は人間と馴れ合う種族ではありませんから…」
「それはわかってるんだけど、それじゃダメなんだよ!もうすぐ展示会があるっていうのに、このままじゃあ間に合わないじゃないか!!」
「展示会、ですか」
「そうだよ…。僕の集めたコレクションを皆に披露するんだ。その時、狼を従えた僕が優雅に歩く姿を想像してみなよ……様になっているだろう?なのに……ッ」
さっきまでのご機嫌はどこかへ消え、マティアスは突然怒り狂ったように叫び出した。
「なぜだ!!なぜなんだッ!!なぜ僕に従わない!?どうして僕の言う通りにできないんだ!!!!!」
床に落ちてあった鞭のようなものを拾うと、マティアスは怒り任せに檻を殴り始めた。
唸り続ける狼に腹が立っているらしく、それは一方的な攻撃だった。
「せっかく!!」
ガンッ
「僕が金を払って!!」
ガンッガンッ
「引き取ってやったのに!!」
ガンッガンガンッ
「どうして!!僕に、懐かない?!!」
「…………っ」
あまりの狂人ぶりに飛香が言葉を失っていると、ハオが視線でもう用は済んだと訴えてくる。
(いや、そうだけど……)
これを放置していくのか、と飛香は檻の中を見つめた。
唸りながらも隅の方で縮こまる狼はまだ小さな身体を震わせて怯えている。
そんな姿を見て、何も思わないはずがなかった。
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