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倉 後段1~R18腐、オリジナル
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一
麟に初めて会ったのは、本家の拡(ひろむ)翁の法要の夜だった。
ただ分家筋だと言うだけでも立場が低いのに、十年以上地元を離れていた天野の、それも小倅であるところの俺なんぞ、口を開くさえ憚られる、そんなイメージが本家にはあり、俺は全く所在なく、末席にぽつんと座らされていたすぎない。
対して麟はすでに両親もなく、ゆえに本家様直角系、拡翁の資産のすべてを引き継ぐ立場にあったのだ。
読経するクソ坊主のすぐ脇に控え、背筋をぴんと伸ばして座っている様は、たった八歳にして当主の風格が感じられ…る訳もなく、最初はただのクソガキと思った。
本当は来たくなかった。
受験だって近い。
こんな時期にジジイ一人死んだからって息子を、それも息子だけを、はるばる一人行かせる、そんなやり方ってあるもんか。
俺はかなり怒っていた。
田舎では、法要も結局宴会にすぎない。
泥酔したオッサンたちの間を厚化粧のババアやら、使用人やらが酒注いで走り回る。
精進落としだなんて枯れたことを言ってるが、本人たちの本音は十中八、九駆け引き。
弔い外交で少しでも、遺産の取り分だの、仕事上のつきあいだのを、自分に都合よく回して行こうという魂胆が見え透いて、俺の食欲はとっくに死に絶えていた。
廊下に出て、英単語の一つでも覚えようかと席を立ちかけた時。
「秀、ちょっと」
本家次代の松東が俺を手招き、俺たちは奥座敷へと場所を変えた。
奥座敷へ続く長い廊下の途中から、宴会の騒音は全く届かなくなった。
奥座敷には濃厚な、静寂だけが漂っている。
いや、正確には静寂と、同じくらいに濃厚な、頭の芯がくらくらするような甘い香りが立ちこめている。
甘いが妖しい、妖しすぎる香り。
何だか躰がふらつく…
「別の部屋にしませんか?」
と言いながら、部屋を出ようとした俺の腕を、松東は力任せに掴み、座敷に引き戻すと畳に押し倒し、のしかかってきたのだ。
「ちょい、ちょっと伯父さん、重…」
のしかかられてるだけでも不愉快なのに、押し退けようとする力が、全然うまく働かない。
「大丈夫大丈夫。融資の話はオーケーだから」
融資?
なにそれ、待て、何でキス、わあっ。
五十をとうに過ぎたジジイの酒臭い息が、俺の口腔を満たす。
唇を奪われている、だけじゃない、俺は今ネクタイを解かれ、Yシャツを剥がれかけている。
叫ぼうとする俺の息は、全部ジジイに吸い取られ、もがこうにも、手足は泥のように重い。
絶望的な状況で、頭だけが冴えて働く。
甘い香り。
奥まった部屋。
ヤられようとしてる自分。
融資。
そう、融資。
だから俺はここに来させられたのだ。
涙がひと雫、頬を伝う。
それ持ち出されたら観念するっきゃないじゃん。
俺は一切の抵抗を止めた。
止めた、なんたって、もともとあの、甘ったるい香りのせいで、ほとんど動けてはいないのだが。
抵抗する気力をなくしたと言った方が近い。
好きにしてくれ、みたいな自虐的な気分。
だって今二十一世紀だぜ?
この平成の御代に、親の金策で躰使う羽目になるなんて。
だいたいそうゆうのって女だろ普通。
俺、男だぜ…
もがかなくなった俺を同意と取ったのか、松東は満面の笑みを浮かべて、半裸の俺にむしゃぶりついてきた。
「いいなあ秀は。すらっとしてて、顔もきれいで。三年くらい前から噂出ててさ。一度会いたいと思ってたんだ。まさかこんな早くにいただけるとはねえ」
言ってろ豚やろう。
今から何が起こったって、俺は全部忘れてやる。
だってこれ、俺が望んだことじゃないもん。
こんな時間なんか、記憶から飛ばしてしまえばいいんだ。
こんなことで親父の会社が保(も)つなら、いや、保たせようと思ったのなら、俺の屈辱なんか、全然安いものなのかもしれないから。
俺の最後のプライドが、必死に時間に耐えていたのだけど…
下半身まで裸にされ、まだ女の躰も知らない部分に下衆やろうの手がかかると、嫌悪感は突然、激しい恐怖に変わった。
「やめろ! 触るな! 誰か! 誰かっ!」
誰に助けてもらえるというんだ。
こんな状況誰にも見られたくない。
でも嫌だ。
裏返された。
松東がカチャカチャと、ベルトを外す音を立て、ジッパーの下りる音もした。
何かがそこに押し当てられ、力が、
「いやだああああっ」
叫んだまさにその時。
襖が開いて、そこにやつがいた。
北岡麟、八歳…
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