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鈴のいる風景1~R18腐、オリジナル
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赤ん坊は無事生まれた。
男の子だった。
『鈴』(れい)と名づけた。
「りん」と読もうかとも思ったが、それではあまりにも露骨すぎる…
子どもは「れい」と決まった。
あの一夜は澪を激しく消耗させはしたものの、彼女は狂気に陥ることもなく、ただひたすらに俺を憎んだ。
憎しみも狂気だとすれば、そんなもので鈴を染めたくはない。
俺は鈴はお袋に託した。
麟を愛してくれたように、鈴を愛して育ててほしい。
俺の願いはそれだけだった。
だがお袋の愛もまた、死んだ麟のみに注がれていたのだ。
慈愛深く愛されているよう見えて、実は鈴は愛されていなかった。
俺の目がないと、お袋は平気で鈴を放置した。
猛暑のただ中に。
極寒のただ中に。
どうして!
俺が問うと、お袋は笑って答える。
この子は麟じゃないもの。
あの女のこどもだもの。
お袋はどうしても、鈴に澪を重ねた。
いかに美しく生まれついても、鈴はあまりにも不幸だった。
このままでは、鈴は幸せになれない…
思い悩んだ末、俺は再婚した。
邪魔な澪とは書類上離婚し、実物は、成分強化之那(ゆきな)で呼吸を止めた。
遺骸は北岡邸の、倉の裏手に埋めた。
星田、木川、島井もそこに眠っている。
二
新しい妻は、十周年のダイヤモンドを受け取ることなく逝った。
子宮系の癌の転移だった。
若かったから進行も早かった。
三回忌を終えた夏、俺の両親が相次いで亡くなり、天野の家はいきなり、鈴と俺だけになった。
天にも地にも、たった二人だけの親子。
だが第二反抗期に入った鈴は、俺と顔を合わせたがらず、たまに一緒に行動しても、会話らしい会話が成立しないのだった。
こんなはずではなかった。
麟を取り戻したのだから、俺は充足して暮らせるはずだった。
だが鈴は麟ではなかった。
確かに顔立ちは似ている。
瓜二つと言っても過言ではない。
けれど立ち居も振る舞いも、決して麟には似ておらず、何より俺を何かと煙たがり、避けようとするその態度が小憎らしかった。
育成ゲームなら、リセットしてやり直せばいいが、鈴は生身の人間だ。
消去はきかない…
そんなわけでその夏、俺は完全に煮詰まっていた。 俺は二つのものに溺れるようになった。
一つは酒。
現状を忘れさせてくれる。
そしていま一つは、麟の死後二十五年も経ってから見つかった、麟の日記だった。
2へ続く
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