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サクリファイス-人犬-2~R18腐、オリジナル
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三
葬儀の翌日、宗田の妻が来た。
鬼のような形相だった。
サディストじみた、尖ったヒールの音を立て、屋敷じゅうのドアを次々開けて、血相変えて何かを捜している。
何かはサンルームにいた。
契約等の『仕事』のないとき、鈴はそこで、日がな一日寝そべっていることを許されている。
屋敷内の管理は使用人たちがする。
犬は何もせず、食事と排泄をしていればいいのだ。
そこへ女が来た。
屋敷の管理の一切を任されている~いた~新野が懸命に止めようとしていたが、女の怒りと憎しみは、犬を直撃するための、そのための行動だけに彼女を駆り立てていた。
女は叫んだ。
「おまえが犬だな!」
鈴は答えず女を見やりもしない。
もちろん女は怒り狂った。
「ひとの亭主をずっと!」
『ずっと』の後の言葉が思いつかないらしく、鈴の片腕~前足から~を掴んで引き上げ、ただもうめちゃめちゃに揺すった。
犬は揺れているだけだ。
ただちらとだけ、新野を見た。
新野は目を伏せた。
「死んだのよ!飛行機が墜ちて!もうあんたを構えない。いい気味だわ!」
と鈴を床に突き退け、いきなり鈴のそれを、ヒールの爪先で踏みにじる。
「キャンとか鳴いたらどうなのっ。犬なんだろ!」
鈴はただただ踏まれている。
乱暴な主人に痛めつけられている本物の犬のように、少し悲しい目で女をちらと、見上げはするが、鳴きも抗いもしない。
それが女をよけいに苛立たせる…
「男とするんだろう!やって見せな!ほら!」
首輪を掴んで鈴の上体を引き上げ、新野の方へ押しやるが、もちろん鈴は何もしない。
女は飼い主ではない。
いうことを聞くいわれはないのだ。
「やって見せなさいよほら!新野も!」
と、今度は新野に矛先を向けるが、老僕は慇懃に、女に断りを入れた。
「お言葉ではございますが、私は鈴様に、触れて良い立場ではございません」
「鈴様ぁ?あんた犬に様つけるの?男とヤる犬だよ?ケツにちんぽ入れさせる犬だよ?変態なのよ?」
「奥様…」
新野は真剣に困っている。
「そのようなおっしゃりようをなさってしまいますと…旦那様もその…」
「あいつもそうなのよ!そうだったのよ!知ってるくせに!わああああっ!」
ついに女は叫び、その場にしゃがみ込んだ。
やっと感情が怒りから、悲しみに移行したのだ。
そのままの姿勢で暫く泣いていた。
誰も何も言わない。
鈴は犬だから言わないし、新野は半ば呆れ、半ば同情している。
女は少し落ち着いた。
落ち着いたが語る言葉がない。
鈴への怒りは依然として渦巻いており、凄い目で睨みながら言った。
「ここは閉めるわ。あんたには行き場がないわね。いい気味。本物の犬ならガス室送りよ」
言い切ってから、反芻する。
「ガス室…」
何やら思いっきつつあるようだが、鈴はその間も、何に拘泥するでもなく、サンルームの光を浴び続けている。
新野は全くのノンケだったが、そういう鈴を美しいと思った。
取り乱した女とは比べようもない。
四
結局女は館を閉めなかった。
宗田より一つ年下のこの女は、残りの人生を、構ってくれなかった夫の愛犬を、いたぶることで暮らそうと決めたらしかった。
室内飼いだった犬は、戸外~といっても、外聞もあるので、実際は中庭~に飼われることとなり、冬の深まる季節のさなか、裸の鈴は、夜毎冷気と雪にまみれた。
インターネットで男色の男たちを募り、目隠しで連れてきては鈴を襲わせる。
だが、所詮は女、彼女は今ひとつわかっていなかった。
菊を無理やり開かれる程度のことなど、今の鈴にはさして苦痛でも何でもなく、逆に殆ど労力を使わなくて済む、奉仕とも呼べない程度の事柄にすぎなかったからだ。
今の鈴の本領は、体を貸すことではなかった。
髪も目も肌も最高級。
かれを目にしただけで、男たちは奮い立ってしまう。
そこへもってきて鈴には、人犬として宗田から徹底的に仕込まれた数々の技と経験がある。
口で、舌で、ぬめる肌で男という獣が望みうる、すべての快楽を提供することが出来るのだ。
それがためにこそ宗田以外の好事家たちが、鈴を欲しがってやまなかったわけだし、その持てるすべてを鈴が発揮したとすれば、女がどんなに外聞をはばかろうと、鈴の存在と居所など、瞬時に世間に明らかとなってしまうだろう。
男と男の快楽の本質を、全く知らない存在ゆえに、女はやることなすことすべて的外れだった。
だからこそ女はただただ鈴が、粗雑に扱われることをのみ望み、おかげでかれという最高級の犬の存在が、俗世に漏れることなく済む、それは皮肉にすぎる成り行きだった。
人犬の扱い方も知らない下衆どもの、単調なセックスに耐えながら、鈴はガラス越しに女を見るともなく見ていた。
長く宗田の人犬で合った自分を憎みつつ、彼女は彼女で、今は新しい相手を身近に見出していた。
よりによってそれは、鈴のケアラーである鈴木で、かれ自身もしばらくは、この逆転をけっこう楽しんでいた。
ずっと使役される側だった人間にはありがちなことだ。
鈴は鈴木を憎みもしなければ見下しもせず、ただ淡々と運命の変化を受け入れていた。
ケアされなくなった犬はもう、持ち前の美しさ以外の美を保てなくなっていた。
髪も肌もかさかさして、艶のない色となり、膝と手のひらは、早速角質化し始めている。
それでも鈴は美しく、何かとてつもなく淫靡な、そそる存在であり続けている。
何故だろう。
暖かい部屋から鈴を見下ろしつつ、亮は不思議に思っていた。
そういえば俺だけは、やつと言葉を交わしたことがあるのだ。
あれ以来一度も聞いたことはないが、少し低くて響きの良い、柔らかな声だった。
そんなことを考えたら、前が立ってきて、慌てた亮は女に迫ってごまかした。
「やあね。若い子はせっかちで」
まんざらでもない声で言い、二人は別室へと消えてゆく。
その間も鈴は、どこの誰とも知れない男の怒張したモノを菊で受け止めさせられ、激しく突かれ続けているのだった。
3へ続く
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