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真理呼 倉・終章5~R18腐、オリジナル
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五
その夜だった。
夜中にふと目を覚ますと、鈴が呻き声を上げていた。
ひどく苦しそうだ。
鈴の部屋を覗くと、当人は、ベッドに上体投げかけて、突っ伏してもがいていた。
「大丈夫か」
見ていられなくなって声をかけると、意外にも鈴は怒鳴り返してきた。
「見るな!あっち行け!」
「鈴…」
「鈴じゃない!真理呼でもない!俺は誰でもない!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!」
聞いてられなくなって思わず抱きしめると、絶望的な叫びは止まったが、呻きと冷や汗と震えは続いている。
「痛いのか」
「痛い。三年も経つのにきのう手術されたばっかみたいに痛い!何で本物のニューハーフってこんなの我慢できんだろ。耐えらんない。男に戻りたい。犬でもいいから男に…」
「鈴…」
「どうしてこんなことになっちゃったんだろ。どこで人生違っちゃったんだろう。わかったって…戻れないけどさ…」
子どものように泣きじゃくる鈴が哀れだった。
何もしてやれなかった。
抱きしめてやるのが精一杯だった。
宗田の未亡人を告発したところで、鈴の躰が元に戻るわけではない。
性転換は不可逆手術、一度女になった男は二度と男には戻れない…
きつく抱きしめているうちに、鈴の震えは徐々におさまってきたようだった。
「大丈夫…おさまってきた…」
「いつもこんなに苦しんでたのか」
「いつもじゃない。たまにひどいのくるだけ」
「たまにっても…おまえ…これあんまりじゃないか。おまえが何したって言うんだ。おまえこそが被害者なのに、あの女は…」
その女と、かつて俺は寝ていた。
俺は少し混乱する。
俺が鈴を逃がさなかったら、鈴は手術されなくて済んだのだろうか。
では今の鈴に陥らせたのは、もしかして、俺なのか。
混乱している俺の前髪に、鈴は優しく指をかけた。
かつては頗るつきの美男、いや、美犬だった鈴。
今は頗るつきの美女。
俺たちは、口づけた…
舌が絡み合い、唾液が混ざり合い、二人の呼吸が昂ぶってくる。
俺の手が、鈴のパジャマをたくしあげ、胸の豊かな林檎をまさぐる。
躰は柔らかい。
生まれつきの女のように。
もともとのしなやかさに、女性ホルモンが加わった柔らかさは、決して不快でも不気味でもなかったが、手術で見事に形づくられた~けれど所詮は人工物にすぎない~女陰まで指が進むと、昂ぶっていた俺の意識はぞっとなって、一気に醒めてしまった。
「気持ち悪い?」
鈴が自嘲気味に言う。
「てゆうか…」
「わかるよ。止めよ」
鈴は素早く衣類を整え、生まれつきの女のように、両手で髪をファサリと直した。
「鈴…」
「大丈夫。嫌われてないのはわかるから」
「…すまない…」
「謝らないでよ。俺が俺抱こうとしても、きっと同じだよ」
「おまえ、女…」
「一人だけ知ってる。人妻だったけど…」
「やるじゃん。で? どうだった」
「どうって」
「女。感想は?」
鈴は少し考え、
「何か…ぬるってしてた…」
おれは思わず噴き、
「確かに」
「作り物はぬるぬるしない」
「ぬるぬるしてたけど?」
「潤滑剤。ゼリーみたいなやつ」
「そーなんだ」
「形整える張形みたいなやつ入れてないとすぐ、入り口閉じちゃうし、手入れけっこう面倒なんだ」
「ニューハーフって、凄い手間かけて女やってんだな」
「だから敬意払ってよ」
「払ってる」
素直な気持ちでそう言うと、鈴も素直ににこっと笑った。
きれいな笑顔だった。
書き手注記
性転換手術に関する記述については、あくまで作中表現として描いています。
時代的にも技術的にも、業界は日進月歩ですし、名医も星の数だそうです。
しかしその一方で、技術の低い医療者や、無免許やモグリも横行している業界だそうですし、まして鈴を手術させたのはあの女性…
鈴はもともと、長く苦しむように設定された手術を受けさせられたのではないでしょうか?
はい。
もちろん言い訳です…
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