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真理呼 倉・終章6~R18腐、オリジナル、
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六
その晩のことを、うっかり日沼に話してしまったが、彼はただただウケていた。
「妖しい夜だったんですね」
「確かに」
「でも何もなかった」
「誓って」
「信じますよ。先生、そういう人だから」
「そういうって…」
「俗に言う、『いいヒト』ってやつ」
「やだなそれ」
「でしょうね」
「でも、真理ちゃんにとっては救いだと思いますよ」
「救い?」
「男ってたいていがっついてるから、やれるかやれないかでしょう? でもってやれなかったら別れようとか言ったりして。だから女性やニューハーフの人たちは、いつも決断を迫られてる感じでしょうねえ」
「そかねー」
「そーすよ。でも真理ちゃんは、先生となら中途半端なままでいられる。かなり傷ついて、傷つけられて生きてきた子みたいだから、モラトリアムな時間貰えるのって、めちゃめちゃ嬉しいんじゃないですか?」
もらとりあむな時間。
学のない俺にはいまいちよくわからない言葉だったが、俺が鈴をほっとさせてやれているというなら、それはそれで光栄なことだと思える。
「もしかして、真理ちゃんは…」
日沼が不意に切り出した。
「先生のデビュー作の…」
グラスを持つ俺の手に緊張が走る。
鋭い日沼がそれに気づかないはずはない。
だが日沼は首を横に振った。
「飲みすぎたみたいだ。ションベンしてきます」
話題転換めかさず、席を立つ日沼に、俺は心で敬礼していた。
楽しい酒を飲んできた俺を、マンション近くで待ち伏せていたのは滝ゆみだった。
「エロ作家!」
俺の顔を見るなり、オコゲは眉を吊り上げて叫んだ。
「真理ちゃんをどこに隠したのっ」
「あんたに話すことは何もなあい」
酔いも手伝って、俺は少し挑発的な言い方をしてしまったが、オコゲは尖った顔つきで、いきなり俺に掴みかかってきた。
「真理ちゃんを返せ!返せ!」
「よせっ」突き退けるとよろけて尻餅をついた。
妙齢らしからぬ悪趣味なぱんつを履いていて、俺はますますこの女を嫌いになった。
「女に手を上げる暴力作家!」
「てめえなんか女じゃねえ!」
思わず返した俺の言葉に、さすがにゆみはぎょっとなって黙ったが、俺の怒りはもう止まらなかった。
「どうしてあいつが店出されたと思う!てめーが一介の客の分際で、大きな顔でしゃしゃり出たからだ!」
「!」
「あいつにはめちゃめちゃ大事なバイト先だったんだ!そんなこともわかんない奴が友だちのわけあるか!」
「…」
ゆみは黙って震えている。
反省したから?
もちろん違う。
非難された屈辱感から放心状態になってるだけだ。
我に返ればまた最初の調子で、自己憐憫やら何やらを歌い出すに決まってる。
それでも俺は言わずにはいられなかったのだ。
その時、俺のマンションから、逃げるように出てきた男が、俺の背中にぶつかった。
乱れた髪、頬の爪跡、ズボンから、半分はみ出したままのYシャツ。
中折が何をしたか、聞くまでもなかった。
「てめえっ!」
渾身の力で殴り飛ばし、俺はは一気に自室へ駆け込んだ。
案の定、室内には、生臭い液体にまみれたまま、ソファの脇で放心している、半裸の鈴がいた。
「鈴っ! 鈴っ!」
「大丈夫。終ったから。全部終わったから。やつ、ぜんぜん知らないから。やるんなら俺の膣じゃなく、ケツだったほうがよかったんだぜって…」
「鈴…」
「教えてやればよかっ…」
『った』と、続ける前に、鈴が嘔吐した。
とめどなく、とめどなく。
そして吐き終わると、鈴は静かに絶叫し始めた…
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