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息を詰めて仰《の》け反ったオレをなだめるように、胸への愛撫が繰り返される。
胸筋ごと押し撫でられ、乳首を舐められて甘噛みされる。チリッとした痛みの中に快感が混じるようになったのは、いつからだろう?
「いつ見ても肌、白いっスよね」
気まぐれに胸元を強く吸われて、キスマークを悟った。
「やっ、痕、つけないでっ」
上ずった声で文句を言ったら、返事の代わりに、ずんっと強く突き揺すられる。悲鳴を上げたオレを組み伏せたまま、アツヤ君がくくっと笑った。
「首筋ならともかく、ココならどうせ見えねーでしょ」
鎖骨の下をべろりと舐めながら、そんなことを言い放つ少年。
確かにそうかも知れないけど、そういう問題じゃないの分かって欲しい。いい年して、キスマークつけて出勤するのは恥ずかしい。
「それとも誰か、見られて困るような人、いるんスか? 恋人とか。いないっスよね?」
確認するようなセリフだけど、どうせいないって分かってるような口調で、ニヤッと見下ろしてくるの生意気だ。
肯定するのも悔しくて黙ってると、強く腰を使われた。「あっ」と喘いで思わず口を手の甲で覆うと、顔の両脇に腕を突かれてグイッと顔を寄せられる。
「恋人なんかいらねーでしょ? オレが代わりに慰めてあげるんだからさ」
ねえ、と返事を要求しながらも、彼は動きを緩めない。
セックスの最中に、そんなセリフ言ったりするトコが、ヒモなんだ。素直じゃなくて、可愛くなくて。
でも、そんなヒモを放り出せない時点で、多分オレの負けなんだろう。
ずんずんと突かれ、揺さぶられて、呼吸がどんどん早くなる。
たちまち熱を帯びる肌。
我慢しても漏れる声。
汗ばんだ互いの身体がぴっとりとくっつき、彼との間の隙間を埋める。
初めは無我夢中だったくせに。いつの間にかアツヤ君には余裕ができて、オレを気の向くままに翻弄するようになってしまった。
焦らしたり、攻めたり。
「どうして欲しーんスか? 言わねーとワカンネーっスよ」
そんな言葉を、ゆるく腰を動かしながら耳元に落としたり。
抜き差しを浅くして、不意打ちのように深くえぐったり。
「んっ……!」
たまらず声を漏らすと、ふふっと嬉しそうに笑われる。でも、そこに甘さはない。
「もっと声出していーんスよ?」
引き結んだ唇をほどくようにキスされて、舌をねじ込まれるけど、そんな誘いには乗れなかった。
素直に感じて、声を上げるのは恥ずかしい。けど何より夢中になるのが怖い。
我を忘れて「好きだ」なんて口走ってしまうのが怖い。それを聞かれてどんな顔されるか、考えるのも怖い。
だからオレは必死に声を我慢して、息を詰め、身悶えつつ快感に耐えるしかない。
何かから逃げて来て、居場所を求めてここにいるだけだろう17歳に、重いと思われたくなかった。
オレからは逃げないで欲しい。
「アツヤっ」
名前を呼んでしがみつくと、返事の代わりにちゅっと軽いキスされた。
「大橋さん……」
耳元で甘く囁く声。
「気持ちイイ?」
訊かれても、素直にうなずくことなんてできないけど。どうしようもなく感じちゃってるのは、多分、とうに気付かれてるんだろう。
終わった後も、アツヤ君は余裕の態度を崩さない。
「あんた、可愛いよな」
息を弾ませつつオレの頭を撫でてきたりして、ホント余裕で生意気だ。
オレがぐったりと沈められて、喋れないでいる内に、彼はさっさとベッドを降りて、TVの前に座ってしまう。
男なんてそんなもんだって、自分でも分かってるけどちょっと寂しい。
でも、もっと構って欲しいとか、側にいて欲しいとか、そういう睦言なんてきっとオレたちには似合わない。
ベッドに寝転がったまま、アツヤ君をそっと眺める。
初めてしたあの日は、終わった後もぎゅーっとオレを抱き締めてたのに。いつからそんな、ドライな感じになったんだろう?
激情を込めた縋るようなセックスが、今みたいに変わっちゃったのは、何度目ぐらいからだっけ?
「アツヤ君」
背中に向かって呼び掛けると、「何っスか?」って面倒くさそうに返された。
今日だって、状況は初めてのあの夜と同じだったハズだ。
なのに意外と落ち着いてるのは、ちゃんと帰って来るって信用されてるからなんだろうか? 1回目と2回目では、ショックの度合いが違う? でもオレ、3回も同じ思いは、繰り返したくないんだけど。
「アツヤ君、ケータイ持ってないの?」
ずっと訊きたかったことを口にすると、彼はちらっとオレの方を見て、警戒するように目を細めた。
「なんで、んなコト訊くんスか?」
「今日みたいな時に、遅くなるって連絡したいんだ。電話が嫌ならメールとか……」
けど、最後まで言い切ることはできなかった。オレの言葉にかぶせるように、キッパリと言われた。
「持ってねーっス」
「買ってあげ……」
「いらねーっス」
そんな風に、かぶせぎみで即答されたら、それ以上の言葉もない。
「ケータイなんて、鎖みてーなモンじゃねーっスか。オレ、繋がれたくねーんスよ」
アツヤ君はそう言って、ゆらっと立ち上がった。
ベッドの前まで来られてドキッとしたけど、彼はそのまま立ち止まらずに、キッチンを抜けて風呂場に向かった。
ケータイの話は、もうこれで終わりってことなんだろうか?
繋ぐだなんて――そんなつもりはなかったのに。アツヤ君にとっては、束縛アイテムになってしまうのか?
「ねぇ、風呂、入るでしょ?」
背中越しに言われたセリフは、ちょっとだけ優しく響いて、なんだか余計に空《むな》しかった。
(終)
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