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花火
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旅行とも言えないが、それなりに楽しい一日が終わろうとしていた。
花火は最終日にとっておこうかと言う話しになったが、その時になったらまた買えばいいと言うことで、近くの海岸に行き、花火を楽しむ。
こんな時の盛り上げ役は、やっぱりナオで、遠慮がちな都雪くんを引っ張ってはしゃぎまくっていた。
その姿を微笑ましい物を見る目で遠くから見ているみーちゃんに、俺はそっと近づいた。
どうしてもあの表情が気になって仕方なかったのだ。
しかし、なんて聞いていいのかわからず「今日はありがとうねー」なんて、間の抜けた切り出し方をしてしまった。
「ん?いやいや、私こそ無理矢理お邪魔しちゃってごめんね」
みーちゃんが、嫌味のない笑顔で答えた。
花火の光に照らされたみーちゃんのすっぴんは、妙に大人っぽく見えて、俺は初めて彼女に対し淡い鼓動を覚えた。
だからと言って、どうこうしたいと言うこともないが、ナオへの後ろめたさから自然と顔を逸らす。
「邪魔だなんて全然だよ。むしろ、助かってる…」
「え?カレーくらいしか作ってないけど?」
「ああ、それもだけど…その…都雪くんの事…」
そう口にした時は、あの時の事に探りを入れようと言う気持ちはなくなっていた。
みーちゃんの雰囲気も手伝ってか、自然と思ったことを口にしていた。
「ナオもそうだけど、都雪くんと仲良くしてくれてありがとうね」
果たして、俺にこんなこと言う資格があるのかはわからない。
そんな気持ちまで汲み取ってくれたのか、みーちゃんは茶化す訳でもなく、問い詰める訳でもなく、ただふふふと笑った。
「シゲくんもそうだけど、私と仲良くしてくれてありがとう」
そう言われて気付く、ナオはみーちゃんのこういう処が好きなのだろうと。
全然好みじゃないのに、なんでだろうとずっと疑問に思っていたけど、ナオだけじゃない。
ふわりと包み込んでくれる様な彼女の性格は、少しでも二人で過ごせば、大概の男は好きになってしまうだろう。
噴射式の花火の周りを子供みたいに走り回る、ナオと都雪くんに視線を移す。
瞬く光に、都雪くんの年相応な満面の笑みが映し出され、都雪くんをそんな顔に出来る事も、こんないい人を彼女に出来たことも全て含めてナオが羨ましくて妬ましかった。
同時に、そんなナオと親友である事が嬉しい。
十代の夏に相応しい感傷に浸りながら、ぼんやりと花火に照らされる二人を眺めていると、みーちゃんが小さく口を開いた。
「シゲくんは、都雪くんが好き?」
突然の質問内容にドキリとする。
その"好き"にどんな意図が含まれているのかわからないが、変に否定すべきではないと咄嗟に思った。
「うん。好きだよ。弟みたいで可愛い」
「そっか」とみーちゃんが笑う。
そして、視線をナオと都雪くんに移し、まるで独り言の様に続けた。
「都雪くんって、結構色んな人に好かれるタイプだと思うよ。でも、シゲくんは大丈夫。きっと、シゲくんは、他の人と違うから…」
全然意味がわからない。
だが、思うところは沢山あった。
その全部を呑み込んで「どういう意味?」とだけ、返す。
それに、みーちゃんは「さあ、わからない。なんとなく」と困った様に笑った。
完全に誤魔化された形になる。
「あー、シゲー!なに、俺のみーちゃんと仲良くしてるんだー!!こらぁ!!!!」
と言う、ナオの叫び声が響き渡り、それ以上、みーちゃんを問い質す事は出来なかった。
次の瞬間、都雪くんが突然駆け出して、俺の懐に飛び込んできた。
裾をギュッと掴まれて、ああ、この海岸にも居るのか…と思う。
視線を上げると、遠くの方であまり素行の良くなさそうな若者の集団が大きな笑い声を上げて近付いて来るのが見えた。
絡まれるのも厄介だし、そろそろ切り上げようと持ちかけると、ナオも気付いたのか、素直に賛成してくれて、手早くゴミを纏め、俺たちはその場を後にした。
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