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みーちゃんの告白
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もちろん、あのまま眠れる訳もなく、俺と都雪くんはリビングに出て、みーちゃんと合流した。
あんなに大きな声がしていたのに、全然目を覚まさないナオは本当に対したものだ。
リビングの灯りを点けると、みーちゃんの困った顔がすぐ目に入ってきた。
てっきりさっきの事について、困ることでもあったのだろうと不安になったが、みーちゃんは視線を逸らしたままで「先にシャワーでも浴びてきたら?」と言った。
言われて、やっと気付くと同時に死にたくなる。
年齢が二桁になってから、二度目のお漏らし…しかも、今回は二人の目撃者付き。
もう、本当に死んでしまいたい。
返す言葉もなく、素直に風呂場へ向かおうとする俺に対し、都雪くんが「僕も行く」と着いてきた。
「僕も汗かいたから」
その気遣いがまた痛い。
先程の恐怖が羞恥心に掻き消されたのは、幸か不幸か。
俺は落胆のあまり、シャワーから出た後も中々口を開けずにいた。
「ごめん。勝手に使った」
と、言って、みーちゃんが淹れてくれたぬるめのココアを飲みながら、時計を見ると、まだ深夜1時にもなって居なかった。
畜生!ああ言う怖いのって、丑三つ時に来るんじゃないのかよ!と思ったけど、何時に来ようと、怖いものは怖い。
やっと落ち着いた頃、みーちゃんが小さく口を開いた。
「ナオには絶対言わないで…」
そう言った声は、少し震えていたと思う。
「都雪くんは気付いているかも知れないけど、私も見えるの…他の人には見えない物が見えるの…」
そう切り出したみーちゃんの様子は、都雪くんがケモノについて告白した時の様子と酷似していた。
内容も似たような物だった。
ただ、みーちゃんの場合は、家が元々祓い屋の様な物をしており幼い頃から、見える物について両親から説明があったらしい。
そして、それを誰にも言うなとも言われていたそうだ。
その意味を理解したのは、彼女が幼稚園児の時だった。
幼い子の考える事だ、親の言いつけよりも、特別な能力を自慢したくて、仲の良い友達にこっそりと話した。
結果、友達を酷く怯えさせ、疎外され、彼女の家の仕事までも如何わしいカルト宗教だと罵られ、家族共々、生まれた土地を離れる事になったのだと言う。
今でも母親だけはやむ負えない依頼にのみ、その力を使うが、家族全員がそれを隠して暮らしているのだそうだ。
だから、誰にも言わないし、言いたくない。
変な物が見える事よりも、それが周りにバレる事が一番怖いと、彼女は言った。
全て聞き終えて、都雪くんと本当に似ているなと思った。
横目で窺うと、都雪くんは神妙な顔つきをしていたが、どこか感動している様でもあった。
俺は一つ頷いて、みーちゃんに「誰にも言わないよ」と言った。
「だから、俺が漏らした事も絶対言わないで」
と付け加えると、安心した様に表情を緩めてくれた。
代わりと言うのはおかしいけれど、都雪くんも俺に話した事と同様の話をみーちゃんに打ち明けた。
「そうなんだ…見えてる物は多分違うけど、都雪くんも辛かったね…」
と、膝の上で握られた都雪くんの手に、みーちゃんが手のひらを乗せる。
きっと、二人にしかわからない共感だろう。
こんなことを信じない人から見れば、酷く滑稽な光景なのだと思う。
しかし、そんな共感すら羨ましいと思う俺の方が、何倍も異常だろうと、小さく自嘲の笑みを漏らしてしまった。
時刻は二時半になろうとしていた。
とても眠れる気がしない。
いや——多分、今回は確かめなければ、今日ばかりか、今後も眠れる気がしない。
「それで…」
重い沈黙を、俺の重々しい口調で破る。
「さっきのはなんなの?」
と言いながら顔を上げると、みーちゃんと都雪くんが、こちらが拍子抜けする程のとぼけた顔を見合わせた。
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