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結論から言えば、あの声がなんなのかは、わからなかった。
予想はするものの、答えは出なかったのだ。
そもそも、あれは本当に幽霊だとか妖怪の類なのか。酔っ払いとかではないだろうか…と思おうとしたが、ナオの声、しかもあの時のマネをしていたのだから、人間である可能性の方が低かった。
いや、もし人間だったら、かなりのサイコストーカーだろうから、それもそれで怖い。
「その時のナオのマネしてたって事は、シゲくん家からついて来たってこと?」
と言ったみーちゃんの言葉に俺は震えた。
「お、俺、憑かれてるの!?」
咄嗟に隣に居る都雪くんの手を握っていた。
祓い屋なんて、どんな事をするのかわからないが、名前からしてナニカを祓ってくれるのだろう。
現に、さっきの声のやつもみーちゃんが追い払ってくれた。
みーちゃんに縋る様な視線を送ると、俺の気持ちを察したのか、みーちゃんは困った様に眉を寄せた。
「あの…シゲくん。私、見えるだけで何も出来ないよ?」
「えっ?」
「そもそも、信じてないし…」
「えぇっ!?」
頼みの綱がプツリと切れた気がした。
みーちゃんの話によると、自分でもその能力を否定する内に、見えてる物、聞こえている物自体を信じられなくなったのだそうだ。
都雪くんは同意していいのか、否定していいのかわからないと言った様子で口を噤んでいる。
こんな雰囲気の中、それならみーちゃんのお母さんにお祓いを…なんて持ち掛けられる訳もなく、俺までも閉口してしまう。
リビングの大窓に掛かるカーテンの隙間からは、光が漏れ始めていた。
「こんな私が言っても説得力ないと思うけど…」
みーちゃんが、漏れ入る光に少し目を細めながら小さく口を開いた。
「シゲくんが大丈夫って言ったのには理由があるの…」
話しが逸れた気がしたが、ここは相槌だけに止める。
「シゲくんには、多分いいのがついてるから大丈夫」
そこまで言うと、みーちゃんは黙り込んでしまった。
何が大丈夫なのか、俺にはちっともわからなかった。
だが、みーちゃんはそれを俺に言ってるのではなく、都雪くんに言っている様だった。
みーちゃんに真っ直ぐ見つめられ、都雪くんは、一瞬、なんのことかと首を傾げていたが、突然、ハッとした様に俺の方を見た。
そして、隣に居る俺の腰へガバッと抱きつく。
本当に何がなんやらわからない。
でも、もう何も言えなかった。
都雪くんは泣いていた。
俺の腰に縋り付いて、嬉しそうな、でも悲しそうな顔で泣いていた。
それを見たみーちゃんは、ふっと小さく笑った。
「んー!安心したら眠くなった!!」
態とらしい声を上げ、大袈裟に伸びをして、みーちゃんが立ち上がる。
俺はちっとも安心はしてないんだけど…
「このままナオが起きたら、面倒そうだから、私、2、3時間寝るねー」
と、みーちゃんがその場を立ち去ろうとしていた。
「ちょ、待って!」
俺が引き止めると、みーちゃんは全て終わったような清々しい顔で「ん?」と、俺を見下ろした。
その顔に拍子抜けしながらも、よく考えればこれ以上、何か聞ける事があるだろうか…と冷静に考える。
ただ、一点だけどうしても気になるのが、
「アレ……もう来ないかな?」
と言うことだった。
俺の言葉にみーちゃんは、もう一度困った様に笑いながら「わからない…」と言った。
そして、
「でも、シゲくんはきっと大丈夫」
と言うと、さっさとリビングを後にしてしまった。
俺は、まだ子供の様にぐずぐずと泣く都雪くんを腰にくっつけながら、暫く呆然としていた。
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