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告白②
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不思議な話だった。
いや——そもそも、都雪くんと出会ったその日から、俺にとって現実離れした日々が続いていたから、今更なのかも知れない。
"魅せられる"事について、都雪くんには痛いほど思い当たる節があったそうだ。
都雪くんが目にするケモノの大きさなどが様々であると言うのは聞いていた。
誰かにくっついていると言う話も聞いていた。
実は、その話には続きがあったのだ。
大概の人間が、ケモノを連れているそうだ。
大体は穏やかで、小さいのばかりなのだが、たまに纏わり付くケモノが、かなり大きい人がいるらしい。
大きなケモノは、忙しなく動き回ったり、歯を剥き出しにして唸ったりしているそうで、そんなケモノを付けている人間もケモノと同じくらい苛立ってるか、ひどく落ち込んでいる様に見えると言う。
一言で表現すれば、殺気立っている。
そこまで来ると、もう双方周りも見えていない様で怖い。と、都雪くんが自分の身体を抱いた。
なるほど、それで人混みは嫌なのかと納得がいった。
だからと言って、単にお姉さんのケモノがデカくて怖いと言う、単純な話ではないなだそうだ。
都雪くんの傍にいる人のケモノが、次第に大きくなるのだと言う。
それが、都雪くんをうちの神社で引き取る事になった真相だった。
実は、最初におかしくなったのは母親だったのだそうだ。
因みに父親は見たこともないらしい。
母親のケモノが徐々に大きくなっていることに都雪くんは気付いていた。
施設などに入れられて、帰って来ると、少し小さくなっていたが、傍にいればまた大きくなる。
それと比例して、母親の気性は荒くなっていったそうだ。
終いには、ちょっとしたことで怒り狂い、手を上げるようになった。
お姉さんは高校進学を機に、奨学金制度を頼り、遠方へと逃げる様に去ってしまったらしい。
そして、都雪くんが中学に上がる少し前、母親は都雪くんを道連れに無理心中を図ろうとしたのだと言う。
そのことを詳しく覚えてはいないが、殴られ気絶した都雪くんを引きずって線路に進入している所を通りがかりの人に止められて、大事には至らなかったが、それ以降、母親は然るべき所で療養をしている。
当時、お姉さんが既に成人していたため、都雪くんが施設に送られる事はなかったが、生活を共にする様になり、お姉さんの足元をうろつくケモノも次第に大きさを増していった。
そして、それに比例する様に落ち込み出すお姉さんの姿を見て、やっとケモノと当人の精神状態の関係に気付く。
思えば、なんとなく仲が良かった友達が軽い暴力沙汰を起こしたり、都雪くんのいるクラスは何故か喧嘩が多かった事も納得がいく。
信じてもらえるかはわからなかったが、都雪くんはそれをお姉さんに打ち明け、近場にあった、この神社に相談に来たのだそうだ。
だが、じいさんが困り果てていた通り、別に何かが憑いている訳でもないから、祓う事も出来ない。
結果、じいさんが、友人などに相談を持ちかけ、お姉さんは夏の間、霊験あらたかなどこかの山に籠っているのが真相で、出稼ぎなんて言うのは嘘だった。
「お兄ちゃんにはケモノがいない…ううん…いないかはわからないけど、見えない」
全て言い終えて、都雪くんは、安心した様に笑った。
因みにナオにはいる様な気配がするが、小さ過ぎるのか、よくわからないそうで、みーちゃんは、それなりのサイズの物を付けているらしいが、上手く付き合っていっている気がするとのこと。
また、ケモノに気づかれると、そのケモノを引き連れた人に話しかけられたりする事も多いそうで、都雪くん自身がなるべく気付いてない振りをすることに努めているという話もしてくれた。
全く信じ難い話だが、俺はひどく納得してしまった。
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