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後日談
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都雪くんを預かった理由は、お姉さんが自らも母と同じ様になっているのに気付き、お祓いをして欲しいと頼んで来たのがきっかけだそうだ。
ここからは俺の予想だが、きっとじいさんは、お祓いなど意味がないとわかっていたのだろう。
本来なら、精神病院を勧めた方がいいのかも知れないが、本人の気が済むならと、この辺りに檀家を持つ、隣町のお寺さんに頼み込み、一ヶ月、浄霊だか修行だかわからんが、寺の手伝いをさせていたのだと言う。
あの男性は、そこの坊主だった。
初めて見たときは、威厳のある人だと思ったけど、今の俺にとっては、あの人も含め全員クソ以外の何物でもない。
本当に勝手でいい加減な話だ。
そんなんだから、効果がなかったどころか、状況を悪化させてしまったのだと思う。
腹を立てても今更なのはわかっているけど、あれ以来、何度も思い出し、その度に歯噛みしてしまった。
その後、お姉さんがどうなったかは知らない。
恐らく、お母さんと同じ所に居るのだろう。
それが、病院なのか、宗教施設なのかは知らないし、知りたくもなかった。
一方、都雪くんは、なんと、祖父母宅に戻って来た。
首の包帯は痛々しかったが、境内で発狂していたのが嘘の様に、前と変わらない笑顔を向けて来た。
様子から察するに、お姉さんの事もあまり覚えていないのかも知れない。
それどころか、もうケモノも見えないのだと言う。
俺はホッとしたが、どこかに引っかかりも感じていた。
一番、妙だと感じていたのは、夜になると、都雪くんに会わせてもらえない事。
いや——会ってくれなかったと言った方が正しい。
夕暮れになると、都雪くんは自ら、神社の裏にある離れの様な小屋に引っ込んでいった。
理由も教えてもらえず、また、自分ばかりハブかれている気がして、つい荒れて暴れ回りながら、祖父母を問い詰めた事もあったけど、俺がここを去るまで真相は教えてもらえなかった。
都雪くんに聞いても、夜のことは覚えていないと言う。
昼間の都雪くんはどこも変わっていないと思ったが、一緒に居ても、何故か別人と話している錯覚にしばしば陥った。
もう、なにがなんだかわからなかった。
大人は信用出来ないし、都雪くんは変だし…こんなこと誰にも相談出来ないしで、頭がおかしくなりそうだった。
そんな中、やっぱり信じられるのは都雪くんしかいなくて、都雪くんを連れて、いつか逃げでしまおう。と、ずっと考えていたと思う。
きっと、都雪くんを連れて、実家に逃げたあの日から、この気持ちは変わっていないし、あの時の親父の言葉は、まだ胸に残っている。
結局のところ、真相はわからなかったのだ。
集団ヒステリーの一種といえば良いのか…
迷信による思い込みから、あの場所に住む人が、おかしくなると言うのが、一番納得出来る説明なのだろう。
だが、そうなると、俺が見た物は?聞いた物は?
みーちゃんと都雪くんの、妙なリンクはなんだったのだろう。
それに、俺についてる物って?
これも、集団ヒステリーで説明がつくのだろうか……
などと、色々と考えたが、答えの出る話でもないので、いつしか考えることをやめた。
ただ、俺の中で勝手に結論付たのは、ケモノは居ると言うことだ。
都雪くんが見ていた物が、それと同じかはわからない。
とにかく、あのケモノは、人間の中にある無意識の悪意のような物だったのだろうと、勝手に思っている。
そうなると、俺にはついていなかったらしいから、俺が全く悪意のない人間と言うことになってしまうと言う、めちゃくちゃ都合のいい解釈になっちゃうんだけど……
まあ、そういう細かい突っ込みは気にしないことにしよう。
どうせ、今後、誰にも話す予定もないのだから。
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