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「綴さんのお連れの方ですか?」
「そうです」
「真緒は?」
俺が聞くと看護婦さんは優しく微笑んだ。
「体の傷の手当は終わりました。風邪の症状も落ち着いてます。あとは薬抜けるの待つだけなので明日には退院できますよ」
「どうぞ。面会もできますので」
後から医師の人も出てきて、礼を言って中へ入った。
「じゃあ、葵。あとはよろしく頼んだぞ」
……は?
後ろを振り返ったら二人は病室に入らず帰ろうとしていた。
「こんな夜中に何人もいたら迷惑だろ?それに真緒の教育担当は元々お前だからな」
「俺たちは店も見なきゃだし、後は頼んだよ。葵」
「ちょっ…」
そう言って社長と高山さんは背を向けてその場を後にする。
たく、こーいう時ばっか教育担当出してきやがって。
そもそもコイツ辞めたんじゃねぇのかよ。
俺は仕方なくドアを閉めて中へと入った。
そこにはベッドで眠る真緒の姿。
細い腕には点滴が繋がれていて、布団から見えた真緒の手を握ると冷たかった。
「…死人かよ」
小せぇ手…
ぎゅっと握ると微かに動いた気がした。
「真緒?」
「ん…、あ、葵さん…?」
薄っすらと開いた目に俺は頷いた。
「体、痛くねぇ?」
「大丈夫、です…。葵さん…ごめ、なさ…ぃ…」
いきなり涙を流す真緒。
震える声でそれを繰り返す。
「なんでお前が謝るんだよ。…謝んなきゃいけねぇのはお前の兄貴だろーが」
「だってっ…、俺のせいで…こんな傷…っ」
そう言って俺の頬に触れてくる。
「ごめんなさっ…ほんとに、ごめ…んんっ…」
その手を掴んで俺は身を起こすと覆い被さるように真緒の唇を塞いだ。
手と同様に冷たかった。
「葵さ…」
「怪我したのは俺が油断しただけ。…自業自得だよ」
「でもっ…」
「お前は、何も悪くねぇよ。だからもう謝んな」
「っ…」
苦しくないようにそっと真緒を抱き締めた。
謝らなくなった代わりに、俺の胸で小さく嗚咽を漏らしながら泣く。
「ふぅ…っ、葵さんっ…」
「好きなだけ泣けよ。落ち着くまでこうしててやるから」
…手がかかる。
でも、なぜか愛しくて仕方なかった。
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