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それがキスだと気付くまで数秒かかった。
「…やっと静かになったな」
その言葉に我に返る。
「なんで、キスなんか…」
熱くなる顔。
あからさまに動揺してしまう。
その人は俺の手首を掴んできた。
「とりあえず座れ」
掴まれたまま砂浜に腰を下ろす。
「あの、手…」
「離したらまた海に入るだろ、お前」
「…………」
黙る俺にその人は息を吐いた。
「なんで死にたいんだよ」
「…別に、なんだっていいじゃないですか」
なんで今初めて会った他人に話さなきゃならないんだ。
…ましてや、あんな……
「言いたくないなら無理に聞かねぇけど」
それだけ言って空を仰ぎ見るその人。
見上げると金髪が風に揺れていた。
…きれい。
俺とは、全然違う。
「何見惚れてんの」
ふいに目があってニヤリと言われた。
慌てて目を逸らす。
「ち、違います…!」
掴まれてる手まで熱くなってきた。
「にしてもさみーな」
「っ…わ!?」
いきなり抱き寄せられて、背後から抱き締められる。
「ちょっ…何す…!」
「くっついてた方があったかいだろ。誰のせいで濡れたと思ってんだよ」
自分が勝手に入ってきたくせに…!
「ほっせぇな、お前。ちゃんと食ってる?」
「だから、あなたには関係ないです…っ」
腰や腹を撫でられて、ゾクッとしてしまった。
店で触られるのと…
明らかに違う感じ。
「関係ない、関係ないってお前ね…。今関わってる時点で十分あるでしょ」
そう言って触る手をやめない。
「…っ、も、触らないで、ください…!」
身を捩ったらその人の手が止まった。
「てか…何この痣」
服が捲れて、言われた言葉に俺は慌てて離れた。
「な、何でもないですっ…」
服を直して立ち上がる。
早くここから去りたくて歩き出す。
「待てって」
だけど腕を掴まれてしまった。
「っ離し「もう何も聞かねぇから、落ち着け」」
その人の手を振り払おうとしたら抱き寄せられて、そのまま広い胸に抱き締められた。
「だけど、死ぬなんて考えんなよ」
「そんな勝手なこと言わないで下さい!大体今日初めて会った人に言われたくないっ…」
上辺だけの言葉なんかいらない。
その場限りの言葉なんか…
「…そーだね。確かに、勝手だな」
え…?
あっさりと認めたその人は俺の手を取ると海に向かって歩いてく。
「な、なにっ…」
迷う事なくザブザブと海の中へ入って行って。
俺は訳が分からなくなる。
さっきは邪魔してきたくせに。
「一緒に死のうぜ。生きてんのに嫌気さしてたトコなんだよ、俺も」
「っ…」
「先輩には雑用押し付けられるし、客はワガママな奴らばっかだし。そろそろ潮時かなって思ってたんだよね」
その人は独り言のように話しながら歩くのをやめない。
どんどんと深くなっていく水深。
「は、離してください…!」
嫌だ、俺はまだー…
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