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買い物も終えて車に乗り込む。
もう雪はやんでいた。
「葵さん、すいません…」
「なーにが?」
エンジンをかけると真緒が謝ってきた。
「お金出してもらったから」
んなことか。
「気にすんなよ。お前に作ってもらうんだしこれ位出す」
真緒がシートベルトを締めたのを確認して、車を発進させる。
「…ちょっと寄り道してこーぜ」
「寄り道?」
「ん」
それだけ答えて俺はある場所へ向かった。
「…神社ですか?」
駐車場がないから路駐して降りる。
雪だけど普段より人は多い。
「ここ地元の人しか知らないんだよね。毎年すばると鈴汰も来てたんだけど、高校行ってからはもうバラバラ」
「そうなんですか」
鳥居をくぐって、神前に行く前に後ろを振り返る。
「ほら、賽銭用」
「大丈夫です。自分で…」
断る真緒に無理矢理金を持たせる。
「財布持ってきてねぇだろ。お前」
そもそも財布自体ないくせに。
いつも直にポッケから取り出してるし。
「ありがとうございます…」
「行くぞ」
また俺の後を付いてくる。
それから神前に立ってお参りした。
「流木様じゃないですか」
終わって帰ろうとした中、声をかけられた。
「加藤さん」
振り返ると宮司の加藤さんで。
「今年も来て下さってありがとうございます」
「いえ。来ないと一年始まらない気がして」
毎年この時期にしか来ないから一年ぶりか。
物腰の柔らかい雰囲気に和まされる。
「やっぱ元旦だから混んでますね」
「えぇ、お陰様で。…そちらは?」
俺の後ろにいた真緒に加藤さんが気付く。
「あー、仕事場の後輩です」
「…綴真緒です」
「私は宮司の加藤と申します。…それにしても、初めてですね。流木様がご家族以外の方を連れてらっしゃるのは」
「たまたまですよ」
なんで連れてきたのか自分でも分からずそう答えていた。
「これからお帰りで?」
「はい。お参りも済ませたので」
「良かったらおみくじでも如何ですか?」
加藤さんの視線の先にはおみくじを引いてる人の姿が見えた。
おみくじねぇ…
「じゃあ、せっかくなんで引いていきます」
たまにはいいかと思い、加藤さんの後に続く。
「どうぞ」
巫女さんに言われて一郎枚引く。
真緒も次に引いた。
「…中吉」
中途半端な。
隣の真緒のを覗いてみた。
「お前、大吉かよ!」
「はい…」
特に表情を変えることなく頷く。
「幸先いいですね」
なんかムカつく…
そう思いながら内容をざっと読む。
「縁談…、傍にあり?」
まさかちはるさんじゃねぇよな…
それだけは勘弁と頭を振る。
「…あ、俺も一緒です」
「は?」
真緒の言葉に手にしていたおみくじを奪って見ると、確かに同じ事が書かれていた。
「これはびっくりですね」
ふふっと笑う加藤さんはどこか嬉しそうで。
「こんな事あるんですか?大吉と中吉なのに」
同じ事が書かれるなんて。
「神様からのお言葉ですので私からは何とも…。ですが、お二人が良い方と出会えるのを願っていますよ」
神様のお言葉かー…
「出会えたらいいですけどね」
そこで加藤さんと別れて引いたおみくじを指定の場所に結ぶ。
「お前は結ばねぇの?」
「俺は持って帰ります」
「…そ」
俺たちが帰る頃、また雪が降り出してきた。
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