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バックヤードに来たら既に誰もいなかった。
(こんな時に限って)
「とりあえず、これに着替えろよ」
レンタルスーツが掛かってるハンガーからサイズが小さめなヤツをとって、ソイツに渡す。
(はぁ、ホントになんで俺が……)
目の前で着替えているソイツを見ながら小さく息を吐いた。
にしても、肌も白いのかよ。見た目は無愛想そうだけど、確かに顔は美人系。じっと見ていたらいつの間にか着替え終わっていた。
「あの、これでいいですか?」
「あー、ちょっとこっち来いよ」
近付いてきたソイツの首元に手を伸ばして、Yシャツの第二ボタンまで外す。それからネクタイを緩めた。
「はい、オッケー。すげぇ着られてる感あるね。幾つよ?お前」
サイズも小さめなのに袖が余ってる。
「十八です」
十八!? 鈴汰と一緒かよ! なのに全然同い年に見えねぇ。
(高山さん、ショタコンじゃ……)
なんて疑惑を考えていたらソイツが口を開いた。
「葵さん、仕事ってどんな感じですか?」
不安げに揺れる目にコイツが初だった事を思い出した。
「今日は俺の隣にいるだけでいい。俺のする事見てろよ」
「はい」
「お前、なんでこの仕事選んだの?」
外見的にも中身も合ってない気がしてならない。それとも客の前では変貌すんのか? 不思議になって聞いたら、ソイツは戸惑ったように目を泳がせた。
「それは、」
「葵、時間だよー」
「あぁ。今行く」
さっと自分の最終チェックを鏡でして、俺はソイツに振り返った。
「お前の名前。何だっけ?」
「綴、真緒です」
「んじゃ、行くぜ。真緒」
さぁ、今日もたくさん俺の虜にしてやるよ。
「葵ー! 会いたかったぁ」
「俺もですよ」
開店と同時に俺の常連客がぞろぞろと入ってきて、とりあえず挨拶の抱擁を一人ずつにしていく。
「今日、七夕イベだから服新調してきたの! 似合う??」
そう言って、胸元が開いた真っ白いミニのドレスで一回転するちはるさん。スカートにはスワロフスキーが散りばめられている。客の中じゃダントツで俺のエース。
他の客を七夕企画の短冊書きに行かせて、ちはるさんと二人きりになる。
この人、すぐ妬くから面倒くせぇのが難点(女はみんな似た様なもんだけどね)。
「似合ってますよ。モロ俺のタイプ」
なんて思った事は顔にも言葉にも出せねーから、笑顔でその腰に腕を回した。
「もー! 上手いんだからぁっ」
そう言って、俺の首に腕を回して巨乳を押し付けてくる。
「キスしたいな」
「それは後のお楽しみで。足、疲れますよ。席までご案内します」
その場を回避すると今度は腕に絡みついてきた。
(あ、アイツのこと忘れてた)
思い出して後ろを見たら変わらず無表情で後を付いて来ていた。
シャンパン、高級ドンペリと次から次へと運ばれてくる酒、酒、酒。
「ねぇ、葵ー?」
完全に出来上がってる。元々酒強くねぇし、この人。
「なんですか?」
「んー……」
頬を上気させて、俺に抱きついてくるちはるさん。可愛いんだけどね、巨乳だし。
でも仕事以外では無理。
「ちゅー、して?」
首をコテン、として小悪魔に笑いながら見上げられる。
(あー、しなきゃダメか)
さっき言ったし。
「……分かりました」
他の卓から見えない様に、グロスたっぷりの唇に自分のを重ねた。何度か角度を変えながらキスをして離れる。
「ん、もっと濃いのがいい!」
「それは二人きりの時で。それ以上のこともね」
「っ」
ちはるさんだけに聞こえるように、抱き寄せて耳元で囁くように言う。その途端、顔がより赤くなって。
「約束よ。葵」
「もちろん」
クスッと笑って、俺は立ち上がる。
「やだ! どこ行くの?」
俺の手を握って引き止めるちはるさんに息を吐きそうになった。
アンタだけじゃないんだよね、俺。鈴木(内勤)に何度も呼ばれてっからさ。さすがにヤバい。
「すぐ戻ってきます。いい子で待ってて下さい」
軽く頬にキスをして、渋々頷いたちはるさんに一安心。
で、アイツは……。俺が言った通り静かに隣で座っていた。
「真緒、行くぜ」
「はい」
立ち上がろうとした真緒の腕をちはるさんが掴む。
「この子は置いてって」
「いや、でもソイツ今日が初なんで別のホスト付けますよ」
近くにいた奴を引き止めるけど、
「なら尚更この子がいーわ」
「う、わっ」
ぐいっと引き寄せた真緒を抱き締めるちはるさん。それでも真緒の表情はあまり変わらず。
冷静なのか、なんなのか……。
「ちはるさんに経験のない奴をつけるわけには、」
「わたしがいーって言ってるの! この子一人に相手させるの嫌なら、早く戻ってきて」
(……そう来るかよ)
俺は一つ溜め息を吐いて、とりあえず他のホストも何人かつけた。
不安だったけど一度言い出すと聞かない人だしね。俺は別の席へと向かった。
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