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「葵くん、遅いよー」
「ずっと待ってたーっ」
席に着くなり他の卓でも言われた言葉を口にされる。
「ごめん、ごめん! 今日立て込んでて!」
イベントだけあって今日一回ずつしか回れねぇし。ヘルプの奴と交代して、二人の間に招かれる。
「やっぱカッコいー! 大好きっ」
「私もっ。あはははっ」
こっちも出来上がってんな。とりあえず水でも頼もうかとした時、
「きゃぁ! 何するのよっ」
一際大きい声でちはるさんの声が聞こえてきた。
すげー嫌な予感。俺は両腕に絡みついてくる客から離れて、ちはるさんの元に向かった。
「ちはるさん、どうし……」
駆け足で行ったら、目の前には腹の下から足元までびしょ濡れのちはるさんがいた。その隣には呆然とする真緒の姿。
「この子に水かけられたのよ! せっかく新調したドレスなのにっ」
「申し訳ありません。ドレスは新しいものを準備し「もう、最悪っ。葵が戻って来るの遅いからよ! こんな子付けるなんてっ」」
いやいやいや。お前が引き止めたんだろーが!
喉まで出そうになった言葉を堪えて、他の奴らにタオルを持ってくるよう指示する。
「……すいません」
周りが騒然とする中、ボソッと呟くように真緒は言う。
でもちはるさんには聞こえていなかったけど。
「そのままでは風邪引きます。とにかく着替え、」
「いい! もう帰る!」
そう言って店の外へ歩いて行く。
(……マジかよ)
「悪りぃ。あと頼む」
「はい。分かりました」
その場にいた鈴木に店の事を頼んで、俺はちはるさんの後を追った。
「はぁ……」
あの後、何とかちはるさんの機嫌は治せた。
てか、俺と二人になった途端機嫌良くなるって何。完璧計画的じゃねーか、あの女。デートの約束しちまったし。
「葵さん! 大丈夫でした?」
「あー、何とかね。店の方は?」
「大丈夫です! あ、だけど葵さんのお客様が待ってるんで早く戻った方がいいッスよ」
「了解。って、お前……」
和希の背後に隠れるようにして真緒がいた。
「じゃあ、俺戻ります!」
「あぁ、ありがと」
和希が店内に戻って、俺とコイツだけになる。表情に変わりはないけど、反省の色はとって見えた。
「後で話聞かせな。とりあえず、今日はもうホール出なくていーから」
「でも、」
「出なくていい。何度も言わせんなよ」
一睨みして言えば、ビクッと小さい肩が震えて真緒は黙った。
俺も残したのは悪いけど、さすがに大物逃がしたからイラつくわけで(しかも今日イベントだからね)。それだけ言ってホールに戻った。
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