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(真緒side)
…変な夢を見た。
真っ暗な狭い部屋で一人泣いてる。
そんな夢。
お母さん、お父さん、兄さん…
呼んでも誰も来なくて、声だけが掠れてく。
独りになりたくない。
寂しい。
ずっと叫び続けてた。
でも、誰も気付いてくれない。
誰も…
ーーー
「ーん…」
朝の光がカーテンの隙間から差し込んで。
目が覚めた。
…昨日の記憶がない。
その前も思い出せるか定かじゃない。
体が怠くて起き上がれないまま、ボーっとしていたらドアが開く音がした。
兄さんだったらどうしよう、そんな恐怖が襲う。
「あれ?起きてたの、お前」
「え…葵さん……」
上から顔を覗き込まれてびっくりした。
なんで、葵さんが…
そんな事を思ってたら、上半身を支えられるように起き上がらされて。
コツン、と額が当たる。
「っ葵さ…」
その近い距離に心拍数が一気に上がる。
「まだ熱いな…。今なんか作るから」
そう言ってまた布団に戻される。
葵さんは立ち上がると台所へ行った。
「できるまで寝てろよ」
その言葉に夢じゃないかと不安になってしまったけど。
「ん。出来たぜ」
その言葉に起き上がると、テーブルの上にお粥があって。
上には梅干しが乗っていた。
「美味しそうです…」
「よく作ってたから。一番下が風邪引いた時とか」
「…羨ましいです。俺は、一度もないから」
そこまで言ってはっとした。
こんな俺の事、話す価値さえない。
気分を悪くさせてしまうだけなのに。
「え、と…頂きます」
何か言われる前にレンゲを手にしてお粥を掬った。
「…ん。おいし…」
「それ食ったら薬飲んで寝ろよ」
そう言って笑う葵さんにドキッとした。
赤くなる顔を隠すように、お粥を口に運ぶ。
「…葵さん、料理上手ですよね」
「そうでもねぇよ。作れんの簡単なヤツだけだし」
「でもすごい美味しいです」
「お前のが好きだけどね、俺は」
何気なく言ったんだろう言葉に顔が更に熱くなる。
きっと、それ以上の意味なんてないのに。
分かっているけど、鳴り止まないドキドキに俺は気付かれないようにお粥を食べた。
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