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真緒のこと
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…アイツが、俺を好き?
頭の中でその言葉がぐるぐると回る。
「やっぱり気付いてなかったんだ」
苦笑しながら社長も言って、ソファの背もたれに寄りかかった。
「気付かなかったって…。俺、アイツに好意持たれるようなことしてませんよ」
寧ろ嫌うだろ!
レイプまでして冷たく接してたのに。
「んー…お前、何か勘違いしてるな。真緒はここに入ってからお前を好きになったんじゃない」
「は?」
「入る前から好きだったんだよ。ここに入った理由も、お前を教育担当にして欲しいって願い出たのも、全部葵が好きだからだ」
「はぁ…!?」
入った理由も、教育担当を願い出たのもアイツが…!?
「俺も聞いたときはびっくりしたけどね。葵には内緒にしてくれって言ったみたいだけど、どっかで会った記憶ないの?」
「ないっスよ!」
「でも、アイツは昔お前に助けてもらったって言ってたぞ」
昔、俺に?
高山さんに言われて考えても思い出せなかった。
「詳しくは教えてくれなかったが、ただ傍にいたいだけって言っていた。それだけで充分ですってな」
「ふふ。一途なんだね、あの子」
「……迷惑な話ですよ。そんなの」
嬉しくもなんともない。
仕事がら好意を寄せられる事には慣れてるし、そもそも俺はアイツなんか…
「じゃあ、この話はこれで終わりね」
手をパンッと叩いて社長が立ち上がる。
「店に戻っていいぞ、葵」
「…戻っていいって、アイツはどうするんですか?」
「どうって…もう辞めた子に何もする必要ないでしょ。戻らないって言ったんだし。それに、ホストには向いてないって聞いてたからね。戦力にならない子は、この店にはいらない」
「っ…」
「それに、お前も嫌がっていただろう。今日で教育担当は終わりだ。今までご苦労だったな」
「………わかりました」
あれだけ嫌だったはずの教育担当から解放されたのに、全く嬉しくない。
頭にはアイツが浮かぶ。
事務所を出たら、なぜか颯斗がいた。
「…なんだよ」
「行かなくていいのか?」
コイツ、話聞いて…
「なんで俺が。いなくなって清々した」
もう関係ない。
アイツとは二度と会わないんだ。
…だから、これでいい。
「ならもっと喜べよ。そんな顔で仕事できんの?」
「っ…十分喜んでる、俺は!」
「そんな風に見えねぇけど」
コイツ…!
普段は突っかかって来ないくせに、何なんだよっ
腹立つ!
「…ほら、これ」
颯斗は一つ溜め息を吐くと、一枚の紙切れを差し出してきた。
「何…」
それを受け取ると簡単な地図と店の名前が書かれていて。
「綴の兄貴が経営してる店」
!?
「なんで、お前…」
「理由は後で話す。早く行けよ」
「……………」
その紙に目を落とす。
ー”葵さん”
アイツの呼ぶ姿が浮かんだ直後、俺はその場を後にしていた。
「たく…手がかかる奴」
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