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ヤキモチ
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恋人と、喧嘩した。
「なあ、悠斗(ゆうと)俺のことほんとに好きなの?」
「そうだっつってるだろ、何回言わすわけ?」
「だって、最近冷たい、じゃん」
「はあ?そんなことねえよ」
「ほら、またそんな言い方するし…」
「普通だろ」
「っ、普通じゃないからそう言ってんだろ!?前まではもっと優しい言い方してたし、それに、今じゃ俺以外には優しそうにして、俺だけに冷たい、し…」
「あ?なんだよそれ。そりゃ一緒にいるのに慣れてきたら会話も落ち着いてくるだろ、冷たくなったわけじゃねえよ。っていうか、なに。春樹(はるき)お前、俺のこと疑ってんの?」
「…、っ」
「………あー、そう。じゃあ疑っとけよ、勝手にしろ。俺今日はもう帰るわ」
「え、待っ…」
「じゃあな」
って感じで、喧嘩しました。はい。
今、俺は部屋に1人取り残されています。
これ、俺が悪いの?いや、俺も悪い所あると思、う、けど。確かに、もしかして?って疑ったのは、悪い。と思う。けどさ!!
俺たち、恋人なわけですよ?
しかも、告白してきたの向こうですよ?
最初の頃は俺が少しツンツンしてて、向こうがツンデレみたいな感じでまあ始めから2人ともツンツンツンツンしてたわけですが。最近のあいつは、ツンしかない。可愛く言ったけど、つまりは冷たいだけだ。多分、俺の勘違いじゃなくて、本当に。明らかに冷たい。だって、周りの友達や女子には笑顔で楽しそうに話してるのに俺には笑顔すらないし。毎日一緒に登下校して、学校が終わったら俺の家でゴロゴロして、土日はどっかに出掛けたり、はたまた俺の家でだべったり。確かにずっと一緒にいる。だから、慣れてきて落ち着いてくるのもわかる。でも、でもさ?
これは、おかしい。冷たすぎる。
俺のこと好きなの?って疑っても仕方ないレベル。むしろ、嫌われてる気さえする。
本当に冷たい。反応が、雑いし薄い。
しかも、その、キス…とか、されたことないし。もう、1年も付き合ってるのに。ハグくらいはしてくれてた、けど。今ではそれもない。ただ、同じ空間にいるだけ、って感じ。
俺だってさ、お前のこと好きだから。傷つかないわけはないんですよ?
なのに、お前はきっとそんな事気にせずに他の奴らと楽しそうに喋っちゃってさあ。
ヤキモチ、焼いちゃうよね?
で、素直に思ってること言ったら、…怒られて。どうしろと?
確かに何回も好き?って聞いてるけどさ、うざいかもしんないけどさ。一向に態度直らないんだもん。俺、そんなにメンタル強くないしさあ、やっぱ好きな人には、その、優しくして欲しいじゃん?だから、何回も言ってんのに…。はあ。
……さみ、しい。
1人になったら寂しい。どんだけ冷たくされても、やっぱ隣にいて欲しい。
好き、だもん。
…馬鹿。
次の日、俺は悠斗に「今日は1人で行く」ってLINEして、早めに家を出て学校に行った。
お前がそんな態度なら、俺だって冷たくしてやる…!
子供じみた考えだと思うけど、ムカつくもんはムカつく。俺ばっかヤキモチ焼いて傷つくなんて、そんなの理不尽だ。ずるい。
悠斗からLINEは返ってこない。既読はついてるから、読んでることは間違いない。つまり、無視。
苛立ちを抑えながらスマホをしまい、友達のところへ向かった。
「朔弥(さくや)…」
「どしたの、春樹。死にかけの顔してるけど」
「死にかけてはないけど泣きたいかな…」
朔弥はいつも俺の相談に乗ってくれて、学校にいる時はいつも一緒にいる。…いわば、親友ってやつかな?うん。
「悠斗と何かあったの?」
「正解。…あのさ、」
そう切り出して、昨日あったことを話し始めた。
最初はただの愚痴みたいになってたんだけど、話しているうちになんか、さあ、
「…っ、悠斗が、帰っちゃって…、うぅ…」
「春樹、泣きすぎ…」
途中からボロボロボロボロ泣いてた。クラスのやつらがすっげえ見てたけど、そんなこと気にしないくらいに悲しくなっちゃって。今まで堪えてたものが、全部溢れ出した。
そしてふいに、教室のドアに目を向けると、
「あ……」
悠斗が、立っていた。
驚いた、ような、怒ってる、ような。目を見開いて、眉間に皺を寄せて、俺を見ていた。
でも、そんな顔をしたのは一瞬で。すぐにいつもの無表情に戻って、悠斗は自分の席へと向かって行った。
…なに、それ。無視?
やっぱ、俺のことどうでもいいの…?
「、朔弥…ぁ、」
「あー、もう、春樹、頼むから泣き止んでくれよ…授業始まるぞ…」
「だって、今の、あんなの…!」
「わかったわかった。今日、一緒に帰ろ?んで、そん時にまた話聞いてやるから、な?」
「ぐすっ…、うん…、ごめんな、朔弥、ありがと」
俺は、自分の席に戻って行った。
悠斗と少し目が合ったけど、すぐに目を逸らした。…悠斗の顔を見たら、きっとまた涙が出てくる。
その後の授業も、休み時間も、悠斗と話すどころか顔を合わせることすらなかった。
そんなこんなで放課後になって、俺は朔弥の元へと向かった。
「朔弥、帰ろ」
「うん。…でも、悠斗はいいの?いや、俺が一緒に帰ろって言ったんだけど」
「ぷっ、本当だな。…いいよ、悠斗は」
もう、知らない。放って帰る。
それでもやっぱり、少し気になったから、教室を出る間際ちら、と悠斗の方を見ると、
…あれ、めちゃくちゃ睨まれてる…
は?何で?何でそんな睨んでんの?
先に喧嘩の原因作ったのお前だろ?意味わかんない。
何か言ってやろうかと思ったけど、それすらも癪に障る。無視して帰ろう。今日は朔弥と一緒に帰って、話を聞いてもらうんだ。
そして、俺は悠斗をそのままスルーして、朔弥と帰った。
途中でファーストフード店に寄って、けっこう遅くまで話を聞いてもらっていて、朔弥にお礼を言って帰る時にはもう9時になっていた。
朔弥に申し訳ないことしたなあ、と思いつつも、心はスッキリした気がする。話聞いてもらってただけだけど。それでも、やっぱ少しは楽になる。モヤモヤは残ったままだけど。
そのまま歩いていて、自分の家が見えたところで、誰かが家の前にいるのに気づいた。
そして、それが悠斗だと気づくのに時間はかからなかった。
え、なんでいるわけ…?待ち伏せ…?
…嫌だ、会いたくない。顔を見たくない。
そのままバレないように逃げようとしたけど、動揺して後ずさったらカバンを電柱にぶつけて、そのまま自分も後ろに倒れてしまった。それに悠斗が気づかないはずもなく。尻の傷みに耐えて立ち上がろうとした時には、もう目の前には悠斗がいてて。
「……っ、なに」
「来い」
「え、は…っ?!!」
ぐいっと腕を引っ張られて、近くの公園まで連れて行かれた。
「なに、なんなんだよ…!」
「………」
ハアハアと息を整えながら話しかける。けど、返事はない。いや、何なの、ほんと。そんな睨まれてもさあ、どうしろっていうわけ。
睨み返していると、突然悠斗に、
ぎゅっ、と。抱きしめられた。
「……悠斗、?」
「……」
「なに、…どしたの」
「…ごめん、春樹」
「……、え」
いや、いや、いきなり謝られても。どうしろと。ていうか、何に謝ってるわけ。
もしかして、ごめんの次に出てくる言葉は
別れよう、とか?
いや、だ。
嫌だそんなの。
涙が滲む。悠斗を抱きしめる手に、力が入る。ごめん悠斗、制服シワになるかも。でも、今はそんなの気にしてる場合じゃない。
やだ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
嫌だ。
「悠斗、俺「ごめん春樹、俺ヤキモチ焼いてた」
………………………、え?
は、……。
何て………?
「ヤキモチ…?」
ポカンとした表情で悠斗を見上げると、その顔は暗闇の中でも分かるほど真っ赤で。
そしたら何だか急に、可愛く見えてきた。
「っ、その、何か俺以外の奴と楽しそうに話してるの見てたら、いじめたく…なって、つい…」
いや、待て待て待て。なんだそれ。おかしい。子どもかよ。
ていうかあの態度はいじめるって程度じゃねえよ。別れるかどうかの瀬戸際だったのに。バカ。バカバカ。
「バカ」
「…ごめん、やりすぎた。本当にごめん。…これからは、ちゃんと、その、…優し、く、する。…だから、俺のこと嫌いになるなよ…」
…バカ、本当バカ。
真っ赤な顔でそんなこと言っちゃってさあ。そんなの、嫌いになるわけ、ないじゃん。
だから今までずっと離れずに付き合ってきたのに。
やっと、仲直りできそう。
ああでも、これだけは確認させてよ、悠斗。
「なあ、俺のこと、好き?」
俺が、ずっと聞きたかった答え。
やっと、聞けそうだなあ。
「…………………、す……、好き……だ……」
……うわあ。
ちょっと待って、これ。
予想以上に恥ずかしいんだけど…!
今度は、俺の顔が真っ赤になる。顔、めちゃくちゃ熱いんだけど。どうしよう。
「春樹、………お前は?」
うーわ、絶対聞かれると思った。思ったけど、でも待って、今、俺やばい。恥ずかしすぎてちょっとなんか、もう、無理。死にそう。
でも、でもでも、
悠斗だけに言わせたら、駄目だよな。…うん、ちゃんと言おう。
息を整える。吸って、吐いて。スゥ、ハァ。
………よし。
「……………、好き」
……………ああ。
駄目だ、恥ずかしい。
顔を隠したくて下を向こうとした瞬間、顔を悠斗の両手で掴まれて無理矢理目を合わせられた。
なに、なに!!恥ずかしいんだってば!!!もう!!!!
「…、キス、して、も、いい…?」
……………、?
…、は、……、はあ??!!!
待って、待って待って、待って!!!
無理、無理無理、恥ずかしくて死ぬ!!!死ぬから!!!
「待って、悠斗、む…「ごめん、我慢できねえわ」え」
むにっ。
……………あ。
「………………」
すっと、すぐに離れていった、その感触。
それって、もしかして、もし、かして。
「〜〜〜っ!!!!!!!」
うわ、う、わ、うわあああああああ!!!!
待って、今、むにっ、て、あ、待って!!!
キス!!!したの!!!??今、悠斗と、き、キス……!!!
「は、…ずかしい、な、これ…」
「言うなバカ!!!!ていうかお前がやったんだろ!!!!」
もう、ああ、もう!!!
心臓が、やばい!!!!破裂する!!!!
やばい、やばいやばい、やばい!!!
やばい!!!!のに!!!!
「…なあ春樹、お前の家、行こ。…………その、もっと、したい」
はい!!!!??
俺を殺す気ですか!!!!???
ていうかちょっとストレートに言い過ぎだろ!!!
もう!!もう!!
「……嫌?」
「っ、…!!」
そんなの、さあ…!!
そんなのさあ!!!!
「……嫌じゃ、ない…」
…………断れるわけ、ないじゃん。バカ。
だって、好き、だから。
終わり。
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