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節分9(完)
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*
次に目を覚ましたのは、綺麗に整えられたベットの上だった。
重たい瞼をゆっくり開くと、見慣れた天井がそこに映る。
「さっきのは…夢…?」
至る所を見渡したが、行為を思い出させるような残骸は残っていない。
もちろん、ベランダにもだ。
「はは…よ、よかった…!…って、あれ…?」
安心感に力が抜け、がくりと首を垂れたときだった。
「ん…?え、なに…これ…えっ」
軽くボタンが外されたワイシャツからちらりと垣間見得た右胸に、キラキラとした銀色のマークがついているのを発見した。
勾玉が3つ組み合わされたような、高そうな太鼓にたまに描かれているマークだった。
「なんだっけこれ…確か…みつ…」
「三つ巴紋だ」
以前どこかで見たそのマークの名前を思い出そうと言葉を発しかけた時だった。
耳元で、美しい低音が響いた。
「え…」
その聞き覚えのある声に、まさか、と血の気が引いたのも束の間、
「よお」
俺の真横には見覚えのある男が佇んでいた。
銀色に光る瞳、整った顔立ち、美しい長い髪。
それはまさしく、”豪鬼”そのものだった。
「うわあああああああ!?」
あまりにも想定外すぎる男の登場に驚き、俺は勢いよく布団の中に潜り込んだ。
「ちょっ、おいこら逃げんなって」
「あわわわわわわわわわっっ」
豪鬼はベットに乗り上がり、布団にくるまった俺に至近距離でそう言った。
「ゆゆゆ夢じゃなかったあああ」
「夢だあ?んな訳ねーだろ。げ、ん、じ、つ、だっ」
そう言って俺の布団に手をかけ、勢いよく剥ぎ取る。
「ひやあああ!!か、返してくださいいいい!」
恐怖にのたうち回る俺に、豪鬼は冷静に言った。
「落ち着け、もう襲ったりしねぇから。…今は」
「今は!?」
それって言い方変えればまた今度襲われるかもしれないってことだよね?!
「あ、やっぱなんでもねー。それよりお前胸んとこもう確認しただろ?」
胸んとこ…つまりはさっき発見した銀色のマークのこと?
「み、見ましたけど…それがなにか…」
俺の返答に豪鬼はニヤリと笑った。
「それはな、三つ巴紋ってんで、俺の所有物になった証だから」
「は…?え、所有物…?誰が、誰の…?」
「決まってるだろ。お前が、俺の」
豪鬼の所有物が…俺…?
ってまさかーー!?
「ええええええええええ!?」
「うわ…るっせ、お前はいちいち声がでけぇんだよ」
喧しそうに眉間にシワを寄せた豪鬼をそのままに、俺は猪突猛進の勢いで問い詰める。
「どどどういうことですか!?それになんか、く、口調もさっきとだいぶ違って…?」
「いやいや、それは当たり前だろ。今の時代に自分のこと我とか言ってたらドン引きだろ?」
「さ、さっきは言ってた!」
「あー。まあ、鬼の姿になった時は口調も戻るし、性格も変わるからな。あれだ、単純に言うと理性がぶっ飛んでる状態。こん時は人を殺したりもしちゃうぞ」
「へぇ…って、なにそれ怖すぎますよっ!」
襲われた時とは打って変わった態度に、頭が追いつかない。聞きたいことは山ほどある。
だが、今一番知りたいのはやっぱり…
「そんなことより!いつ、俺があなたの所有物になったんですか!俺認めてないですよね!?」
俺がいつ如何なる時に、この鬼のモノになってしまったのかということだ。
「そりゃお前が行為中に俺の目ぇ見た時だな。ついうっかり催淫かけちゃってさ、鬼の掟的なやつで、催淫かけた相手を自分のモノにしなきゃなんねーのよ。だからほれ、その三つ巴紋が俺のモノだっていう証。あ、ちなみに消えねぇから」
他人事のようにケタケタと笑う豪鬼に、俺はもうなにも理解できず、とんでもない状態から逃れるように、ふっと意識が薄れた。
「んあ?おーい、死んだ?」
なおも笑う豪鬼の声がぼんやりと聞こえた。
かくして平凡リーマンな俺と変人鬼男との生活は始まったのだった。
続く←
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