アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ケイシ×栄一2
-
「美味しいね!栄一さん!」
対面して座っているケイシさんが幸せそうな顔をして言った。
彼が頬張っているのはきんぴらごぼうだ。
「あなたは本当にきんぴらごぼうが好きですね」
キラキラオーラを抑えるように変装させたケイシさんの口元には胡麻がついている。
「ああ、ほら、ついてますって」
子供のようなケイシさんの姿に苦笑しながら手を伸ばすと、
「あれ、栄一?」
後ろからぞわぞわする声が聞こえてきた。
嫌な予感がして振り向くとそこには。
「やっぱり栄一じゃん!久しぶりだなー!」
「げっ…」
私の最も苦手とする人物が笑顔を振りまいていた。
「ちょっ!げっ、ってひどくない!?」
「さ、ケイシさん帰りましょう」
「おいこら!ったく、いつものごとく冷めてんなー。昔はよく一緒にお風呂入ったり一つのベットで寝たりした仲じゃないか!」
「いつの話をしてるんですか…気持ち悪いですやめてください死んでください」
「ははっ、さすが俺の冷酷女王様だな!」
「誰があなたのものですか…まったく」
「そ、そうだよ!栄一さんは俺のものだもん!!ねぇ栄一さんこの人誰なの!?」
面倒くさい人物と話しているといきなりケイシさんが割って入ってきた。さも当然のように私を自分のものだと言い張る彼に内心とくんとしてしまいつつ答えた。
「あー、えっと、この方は…」
「初めまして!俺は笹木 有弘(ささき ありひろ)。栄一の親戚です」
私の声に被せて有弘は自分で自己紹介をした。
詳しく言うなら、笹木有弘は私の従兄弟である。
今では違うが、数年前は家も近く、2人で飲みに行ったりすることも多々あった。同い年で価値観も似ていることから結構仲はいい方だし、私自身も彼をそこまで嫌ってはいない。
ただ一つの欠点を除いては、だけれども。
「てか…本当に栄一って俺のこと冷たい目で見るよな!そーゆーの大好き。すげぇゾクゾクする!」
「……」
彼の欠点。それは、究極のマゾヒストであることだ。
まあ別に趣味は人それぞれだし、そんなことで有弘を嫌いになったりはしない。ただ、一つ問題があるだけだ。
それは、虐めてくれる対象に私も含めているということ。
例えば、用事があり彼に電話をかけるとまず最初の言葉が『罵って!』であるとか。
私にそういう趣味はない、ときっぱり断っても中々それを認めてくれず今に至る。
「…はあ……。気色悪りぃこと言ってんじゃねぇぞこの豚野郎」
あ、ついトゲトゲ言葉が口から出てしまった。すみません有弘
「っぁ…な、なにそれ、栄一わざと言ってんの?ちょっと勃っちゃった」
…小さい頃から先生に『トゲトゲ言葉は使っちゃいけません』って教えてもらったけど、こういう意味だったのか。
「ああもうほら…さっさっとトイレに行って下さい」
「え〜、栄一に踏んで欲し」
「さて、きんぴらごぼうも食べ終えたことですし、帰りましょうかケイシさん」
「ちょっ、無視とか嬉しいんだけど!」
「はいはい良かったですね、それじゃ」
「えっ、マジで帰るの?まあいいや、今度会ったら罵ってねー!」
これ以上ここにいるのも面倒くさそうなので、ぼーっと惚けているケイシさんを半ば強制的に立たせ、私たちはその場を去った。
まったく、結局スケジュール確認もできなかったじゃないか。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
74 / 183