アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
幸穂×智風3
-
その後の部活は散々だった。
ランニングでコケるし、キャッチボールでは10分の8の確率でミスるし、バッティングでは自打球が当たるし、本当に最悪だ。
だが、この一連のミスの原因は分かっている。
「んー、幸穂、今日調子悪いか?」
「…っす」
どれもこれも、少し離れた場所でバッティング練習をしている、1人の男のせい。
さっき一方的にエンガチョ宣言をしてきた男、藍堂幸穂のせいである。
忘れよう、気にしないようにしよう、そう思っても必ず、幸穂の言葉がリピートされてしまう。
ーーもう関わりません。さようなら、先輩
「ッ………」
また、思い出してしまった。
その度に、胸が、ズキンと苦しくなる。
(くそっ…なんなんだよ…もう…。なんでこんなに心臓痛いんだよ……死ぬのか俺はっ)
原因不明の痛みに心臓が苛まれていたそのとき。
「智風っ!カバー頼む!!」
「ッッ!?」
チームメイトの切羽詰まった指示が聞こえてきた。
気づけばボールは、丁度ライトとファーストの間へと落ちそうな状態だった。
「オーライっ俺がいく!」
そう言ってファーストが打球に反応し、白球へと飛び込む。
ここでセカンドの俺は普通、一塁のベースカバーへと走り、フライを落とした時のために備えてなければならなかった。
しかし。
「ッッおっけ、ぐッ、んぎゃっ!?」
反応が遅れた俺は焦り、ベースを踏み外してしまいその場にべしゃっと潰れてしまった。
「ッッぅ〜〜!!」
顔面から身体へかけてじわじわと痛みが込み上げてくる。
地面に全身を強く打ち付けてしまった。
「ちょっ、先輩!大丈夫ですか!?」
「ぶはっ、だっせーww」
「おー!!さすが智風、綺麗な転び方だな!」
「あ、待って下さい。写真撮るんで動かないで、先輩」
「お、いいなそれ!あとで送ってw」
盛大に顔面から逝った俺にチームメイトがわらわらと集まり、数名を除き……ごめん、嘘。
大多数を除き俺を心配してくれた。
あのね、足がね、ものすっごく、痛い。
「ねぇみんな。ぼくね、立てないかも」
どうやら転んだ瞬間足首を変に捻ってしまったようで、自力で立ち上がることが出来ない。
「うーん、じゃあしょうがない。アイツに頼むか!」
「へ?」
「おーい幸穂ー!!智風保健室まで連れてってやって!」
「ぎゃああああ!!」
誰よりも俺の心配をしてくれないキャプテンが、めっちゃふざけたことを言いやがった。
「いやいやいや!!大丈夫だから!ほら俺はこの通り元気元気、」
「……大丈夫らしいのでいいんじゃないですか?」
「「「っ……!?」」」
「……え…」
辺りがしんと静まりかえった。
いつもなら、俺のことになると人一倍心配する幸穂が、冷たく言い放った言葉。
それがまた、俺の心臓に突き刺さった。
「え、えーー!?なになにお前らなんかあったの!?」
「ゆ、幸穂…お前どうしたの!?あんなに先輩大好きだったのに!!!」
「破局か破局!?」
メンバーが口々に思いの丈を叫ぶ。
そんな中俺は、拒絶されたことに対し腸が煮え返る程怒りを覚えた。
あからさまな態度に腹がたつ。
仮にも今まで好きだの何だの語ってきたくせに、こうも簡単に手のひらを返されるとなると、すっげぇムカつく。
俺は人に振り回されるのが大嫌いなんだ。
「っ、ざけんな幸穂!!さっさと保健室まで連れてけ!」
「…は、だって大丈夫なんでしょう?」
「大丈夫じゃねーよバカ!先輩命令だ!!」
俺は痛めた足首を引きずるようにしながら幸穂の方へと向かい、無理矢理幸穂の背中におぶさった。
「っ、なんです」
「早く連れてけ!!!」
「…っ」
反論を遮って口調を強めて言うと、幸穂は何か言いたげにしながらも、ゆっくり歩き出した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
149 / 183