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三十路サンタ2
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いかにもクリスマスって感じの赤い帽子を被ったその男の名は、三田純也(さんた じゅんや)。
俺が高校2年の時のクラスメイトだ。
三田とは席も近く、一緒にお昼ご飯を食べたり、暇な時はお互いの家に遊びに行ったりと、そこそこ仲が良い友達だったと記憶している。
とは言ってもまあ、3年になりクラス替えで別の組になってからというものは、今日に至るまでまともに関わることがなかったような、浅はかな繋がりなのだけれど。
いつか飲みに行けたらいいなーなんて思ったりもしたが、結局行動に移したことはなく、今に至る。
三田はいわゆる”男前”な性格で、曲がった事が大嫌いの頑固オヤジみたいなやつだった。
しかしそれは本人が自負しているだけのことであり、可哀想なことに実際のところは、三田などという可愛らしい苗字と中学生のような幼い風貌を兼ね備えていたせいで、周りの連中に『サンタジュニア』なんて呼ばれていたほどだ。
社会人になればもう少し大人っぽくなるだろうと思っていたのだが、三田の愛らしさは未だに健在のようだ。
大きく黒目がちな瞳をキラキラと潤わせ、頬は赤らみ、艶のある唇からは寒さを象徴する白い息が何度も吐き出されている。
そっちの気がある人間ならば皆、薄く開いたそこに舌をねじ込んで、腰砕けになるまで口づけをしてやりたくなるだろう。
その証拠に、どうやらさっきから影で狙ってるハイエナが一人、いるようだった。
寒空の下、1人ベンチに座り込む、隙だらけの煽情的な男。
その上、酔って抵抗もできそうもないとなると、パクリと一口で食べられてしまうのは当然の事である。
なんて言ったって、三田が今座っているベンチの真後ろに佇む、ひっそりとしたそのお店は。
「ねぇ、そこの可愛らしいサンタさん、よかったら俺と遊ばない?」
「あー…?」
一部の人間にとってはかなり有名なゲイバーなのだから。
「んだおめぇーヤんのかオラァー」
「ふふ、そんなデロンデロンに酔っちゃって…せっかくのクリスマスなんだしさ、俺とも一杯付き合ってよ?」
意味ありげに三田の太腿に手をおいた男は、慣れた手つきでベルトを外しにかかった。
三田は意識が朦朧としており、抵抗するどころか完全に身体の力を抜いてされるがままになっている。
その上、気分がコロコロ変わるというアルコール特有の性質のせいでか、先ほどまでの”触るもの皆傷つけた♪''なんていう某有名歌詞のような荒れ果てた様子とは一変している。
「ふへへ!俺は〜クリぼっち〜そう!ぼっちっち〜なのだぁ〜…!合コンで振られ〜今日も1人寂しく眠りにつくのさぁ〜…」
呑気に歌を歌う三田。
…流石に馬鹿なんじゃないかと思う。
「素敵な歌だね…もっと奥に行って俺に聴かせてほしいなぁ…ほら、立てる?」
三田に絡む男もいよいよガチモードに入ったようで、フラつく三田を半ば強引に立たせると、その手を腰に回した。
「君、名前はなんて言うの?」
「あー、俺?俺はねぇ…」
「サンタ」
ヘラヘラと笑い自分の名前を告げようとする三田を遮って、俺は、彼の腰に置かれている手を払い落とした。
「っ、なんだい君は…?」
男は突然のことに心底驚いたようで、弾かれたように距離をとった。
年齢は40代前半くらいだろうか。全身をブランド物で飾り、まるで自分が一番ですとでもいいたげな目をした男だった。
あーあ、胸糞悪い。
「残念です。あなたがもう少し美しかったら美味しく頂いてたところなんですけどね…まあそれは置いといて、この人は俺のサンタさんなので貴方は消えてくださいね」
男の手をきつく握りにっこりと微笑んでやれば、少し怯んだように身をかがめ、やがて俺の手を振りほどくと、恨めしそうにその場から去って行った。
「はあ…」
久しぶりに明日オフになったからいつもの店で楽しもうと思ったんだけどなぁ。
「残念。せっかくいい感じの男捕まえて遊ぼうと思ってたのに…三田のせいで収穫ゼロだよまったく…」
いつもならあんなの放っておくんだけどなぁ。
なんでか分からないけど、三田が知らない男に触られてるのはスッキリしなかった。
…高校時代から可愛い人だな〜なんて思ってたからかな?
まあ、当の本人がこれじゃあ、どうしようもないけどね。
「ふへへ…俺が正義だぁ…むにゃむにゃ……」
三田は身の危険も知らずに先程から眠りこけている。
つい数分前は意味がわからないほどキレていたのだが、あれはもういいのだろうか。
どちらにせよ、酔っ払いのやる事はよく分からない。
「んんー…やっぱバチコンはいい毛並みだなぁ…」
寄りかかってくる三田は完全に意識が飛んでしまっている。
はてさてどうしたものか…
「とりあえず…お持ち帰り、かな」
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