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そんな顔するくせに。
秋都の話題を出せば、噛み付くくらいに俺の事睨んでくるくせに。
なのになんであんたって人はそうも意気地がないんだよ。
「……その顔をさ、あいつにも見せてやりゃいいのに」
ふ、と自嘲めいた笑みで口元を歪め俯く。
「子供の頃……まだ俺と秋都が小学生くらいの時。あんたが誕生日プレゼントにって動物園連れてってくれたの覚えてるか?」
「動物園?」
いきなりなんの話や? と眉を潜める兄貴を見ずに話を続ける。
「人が凄くてさ、歩きづらくて……どんどん人波に流されて最終転んだ俺をあんたが危ないからって抱っこしてくれたじゃん」
「あ。あー……そんな事もあったなぁ。てかよぉ覚えとんな。あれ確かお前らが七つ八つの時やで」
「そん時に、隣にいた秋都がいきなり声あげて泣き出したじゃん。俺も親父も、おふくろもわけわかんなくて。癇癪起こした秋都にどう接すればいいかわかんなくて」
秋都が人前で泣くなんてほんとに珍しくて。大きな声をあげる事なんてそれこそなくて。母さんがおろおろとしてどうしたらいいのかって困ってた時。
『今日はずっと僕だけの兄さんだって言ったのに! 兄さんの嘘つき! 嘘つき!!』
そうやってますます声をあげる秋都に、なんとなく俺はいたたまれなくなって。秋都が泣いてるのが自分のせいだってわかってすぐに鈴兄貴の腕から降りたんだ。
俺と秋都は親父やおふくろ以上にこの兄が大好きだったんだ。舞の師としての憧れもあったけど、それ以上に兄として。でも秋都は多分1人の男として。
でも昔はそうそう外出もままならなかった俺を、鈴兄貴はそれはもうアホかってなくらい甘やかしてて。少しでも俺が歩を遅くすると疲れたんじゃないかってすぐ抱っこしてくれてた。
でもその度に秋都と繋いだ手を外していて。その日もそうだ。秋都は俺の少し前を兄貴と手を繋いで歩いていて。その後ろ姿を俺はまぁちょっと羨ましげに眺めてた。
親父とおふくろは子供そっちのけでイチャコラしてたわけだが。それはまぁおいといて。
そんで何かの拍子に脚がもつれて転んだんだ。そしたら鈴兄貴の奴パッと秋都と手を放してさ、俺に駆け寄って来た。疲れたやろ、兄ちゃんが抱っこしたろなって。
勿論俺はやったーと思いながら兄貴に抱き着いたんだけど……それ以降はさっき話した通り。
「あん時からさ、秋都にとってはあんたは特別だったしあんたにとっても秋都は特別だったんだ」
それこそ俺なんて既に間にはまれないくらい、この2人は……。
傍からみればただの兄思いの弟で、弟思いの兄なんだろう。でも違う。この2人は違ったんだ。
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