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夏休みの誘惑
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その誘いは突然だった。
「海の家?」
「そうそう。俺の親父の実家がさ、入鹿の方で民宿やってんだけど毎年夏休みに円と豊と行ってんだよね。お前も行かね?」
わざわざ3年の教室までそんなお誘いを持ちかけに来た後輩-奥村蘭-に、面倒くさそうに返事を返す。海、という単語に少々興味そそられてはいたけれどそれを顔には出さずに。
「宿泊費もただにしてくれるしーうまい海鮮も毎回食べさせてくれるしさ、うちのばあちゃん」
だからさ、行こうぜ。と満面の笑みで誘ってくる蘭に、俺は暫し考える素振りを見せる。
海……か。別段家にいた所で何か用事があるわけでもなし。休みともなれば秋都といる時間も増えるわけだ。それはなんとなく阻止したい。
と、なれば答えは一つだろう。
「別に、いいぜ」
広げた音楽雑誌をぺらりとめくりながら素っ気なく返事を返す。するとやや間が出来て、何だ? と蘭を見上げれば驚いたように瞳を瞬く奴の顔が視界に入る。
「なんだよその顔は」
「え、いや。お前の事だから第一声は断られるのを想定してたんだけどさ。あまりにもあっさりOKだしてきたから驚いてんだよ」
だってお前いつも付き合い悪いしよ、と返してくる蘭に俺の眉間に皺がよる。
誘っておいてそんな返しをすんのかよ。やっぱり断ればよかったか?
一瞬そんな後悔の言葉がよぎったけれど、まぁいいかと一蹴りして雑誌へと視線を戻す。
「えーと、じゃあ海都も参加するって事は俺と豊、円と……あと湊ちゃんと秋都入れて六人か」
ん?
今なんつったこいつ。
「なんて?」
「え?」
「あと誰が来るっつった今」
「だから俺と豊と円と湊ちゃん、秋都。んでお前」
ちょっと待った、と雑誌を閉じる。
「なんで秋都と湊まで……お前ら3人で行くんじゃなかったのかよ」
「えーだって円がたまには他も誘おうぜっつってもう声かけちまってたんだもんよ。秋都は豊が絶対連れてく! って言うから。まぁ無駄に広い家だし、他の客用に部屋残したってあまるから何人いても大丈夫大丈夫」
ケラケラと笑って「じゃあまた詳しく決まったら連絡入れるわ」と教室を出て行く蘭の背中を見送り。
前言撤回。やっぱり行くなんていわなければよかった。
なんて言葉は声に出ることも無く俺の胸の内に収まった____。
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