アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
待
-
あんな顔をさせるつもりはなかった。
あんな顔をさせないと、あなたを守ると、決めたのに。
ぼくが、あなたを、傷つけた。
後悔は尽きない。
でも、だからって、ここで退く気はないってのが、ぼく、なんだよね・・・。
自嘲が漏れる。
メールが返ってこない。
何事もきっぱりと言い切るあなただから、きっとそれは、迷ってるんでしょう?
ぼくが悩ませている。
困らせている。
――ごめん。
そのことを嬉しいと思っている。
・・・少しね?
その何倍もあなたを笑顔にしたいとも思ってるんだから。
ぼくが、あたなを、笑顔にしたい。
他の誰でもない、ぼくが。
ぼくがあなたを笑顔にするんだ。
あなたの、あの、真っ直ぐな笑顔がぼくに向けらるのを想像しただけで、ぶるりと身震いしてしまう。
あの頃のぼくに戻ってしまって、盛りのついた犬のように、下半身が熱くなる。
会いたいなあ。
顔を見て、触れて、キスして、セックスしたい。
甘く、蕩けさせてしまいたい。
カウンターの照明がグラスの氷に反射するのを見つめながら、そんなことばかり考えている。
「こんばんは」
声に顔を上げると隣の席から華奢な男の子がぼくに笑いかけてきた。
こうして話しかけてくる客もいるが、やんわりと退いてもらう。
だって、あなた以外の人と話すことに、何の価値がある?
「こんばんは」
「キラを待ってるの?」
「・・・」
「ねえ、キラの事、教えてあげようか?」
この子は、何だろう。
ざわりと戦闘準備に入った心を笑顔で包み込む。
「・・・どんな事? あ、でも、君の事も興味があるな」
「ふふ。サクって呼んでよ」
「うん、ぼくはユキ」
愛される術を知っているその子は、キラキラとした笑顔を浮かべた。
「キラってさ、昔、歌手? シンガーソングライター? だったんだって。ゼンっゼン売れてなかったけど!」
ああ、知ってる。
「子供番組の司会に大抜擢されてさ・・・」
「すぐに父親が性犯罪者だって雑誌に載って・・・」
「番組から下ろされて、業界から干されて・・・」
知ってる
全部知ってる。
知ってるから。
・・・だから、お前は何が言いたいんだよ?
「もう、オジサンの癖に。そこらじゅうに色目振りまいてさ、尻軽で、性悪で、最悪。ね? そう思わない?」
にっこりと笑ってぼくを覗き込んだその子の顔が、さっと、色を失って固まった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
19 / 94