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番外編4:お好きです?(1)
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芸人が映し出されているテレビの液晶から深雪に視線を移す。
「ハ?」
「え? お嫌いですよね?」
観覧席の笑い声が煩くて、と言う訳ではないけれど深雪の言葉の意味が理解できずに首をかしげた。
え?
いや、嫌いとか、別に。
好きでもないし、そもそもそんな強い思い入れがない・・・。
「急に何なワケ?」
「ふと思って」
「・・・ああ」
ちらり、とテレビに向けた深雪の視線を追えば、芸人の一人がウエイトレスの格好でコントをしていた。
わざととは言え醜い。
体格に合わない衣装に、安物のウィッグ、すね毛の目立つガニ股は、滑稽か不快か紙一重の領域だ。
「興味ない」
「えー」
「えーって・・・」
高い声を上げた深雪に冷めた視線を送れば、にこにこと微笑んでいた。
ん?
なんだよ、そのいい笑顔。
「昔、色々着てたじゃないですか」
「ハ?」
「くまとか、黒猫とか、ちょんまげとか」
「あン? ・・・・・・。・・・・・・ア! ・・・・・・れは!」
記憶の中から、煌びやかな思い出が突然飛び出してきた。
ああ、そういや。
色々と・・・。
着た。
着たけど。
あれは。
「衣装! コスプレじゃねえ!!」
「可愛かったなあ」
「ちょ、あれは、・・・仕事! 仕事だから」
「また見たいなあ」
「着ねえよ?」
「ほんと可愛かった・・・」
「着ねえからな? 忘れろ。オレは忘れた」
「王子様とかもありましたよね」
「うああああああああああああ! おま、忘れろおおおおおおおお!!」
聞いちゃいねえ!!
何だこいつ!!
何だこいつ!!!
「嫌いじゃない、んですね? コスプレ」
「嫌い! 嫌い! でえええっ嫌い!」
「えー」
「えーじゃねえよ、バカっ」
もうさ、何でこんな疲れなきゃなんねえの?
大声を上げた所為でハアハアと乱れる息をのみ込む。
ここオレんチ。
寛ぎの空間。
勘弁してくれ。
つーかさ、毎日来るんじゃねえよ。
寒空の下待たせていると思うと、どうしても足早に帰宅してしまう自分が気に入らねえ。
それを社長にからかわれるのも気に入らねえ。
ちげーよ?
別に、風邪とかひかせたらメンドクセエじゃん?
それだけ。
いっそ鍵渡しちまおうかと思ったのに、それだけはやめとけと社長に言われた。
別に盗まれて困るもんはねえし、どうでもいいんだけど。
そう言うんなら、からかうんじゃねえっての。
「この間のハロウィンも可愛かったのに」
「!」
こいつは・・・。
プチリ。
自分の血管が切れる音とか久しぶりに聞いた気がする。
うん。
オレも温厚になったもんだ。
なあ?
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