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番外編5:Merry mellow Christmas(2)
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角を曲がると、石造りの高い門とその向こうに大きなモミの木が見える。
近付いていけば、雪の隙間に電飾がのぞいていて、へえ、と思った。
オレのいた頃にはこんなモンなかった。
誰かの寄付か、それとも資金繰りが上手くいっているのか。
ゲスの勘ぐり。
最近のガキは贅沢だな、と口を歪めながらも、どこかほっとする。
豊かさは悪いことじゃない。
門の前で足を止めれば、後ろの足音も止まる。
見上げた建物の尖がり屋根には、十字の影。
古い教会。
ボロいのに何処か荘厳さを感じさせる佇まいは・・・今のオレには敷居が高けえ。
「人が多い」
「そうなんですか」
「平日だろ」
重たく感じる空気に耐えかねて分かってた事を改めて呟けば、深雪が応えてくれた。
ああ、畜生。
息苦しいのは空気が冷えているから、だ。
深雪がいる方向が暖かい気がするとか、そんなのは気の所為。
あり得ねえ。
「クリスマスですもんね」
「ン」
降誕祭と復活祭。
その日だけは教会中が大きく賑わう。
普段は慎ましくいじましく暮らしている施設の子供達も、その時ばかりは浮かれた気分を味わえる。
辛さも寂しさも、ほんの一瞬忘れられる日。
今は昼食会の最中だろうか。
見上げても雲に厚く覆われた空に太陽は見当たらず、時間を知る術はない。
相変わらずシケた空だ。
何も変わらねえ。
「ウラまわるか」
「はい」
楽しい日に水を差すようで、居心地が悪ィ。
何もこんなに日、と自分でも思わねえでもないけど、どうせ来るならこの日以外にはねえだろうし。
「コケんなよ」
門から続く塀に沿って小道がある。
除雪車が入れない狭い道は、雪掻きしてあるとはいえ足元が悪い。
ちらりと深雪を振り返れば、手が差し出された。
霜で重くなった睫毛を瞬かせると、少しだけ鼻を赤くしたイケメンが二コリと笑う。
「危ないから繋いで下さい」
「巻き込まれるからヤだ」
「転ばないから大丈夫ですよ」
「じゃ必要ねえよな」
「あ、やっぱり転びます。ちゃんと下になりますよ」
「巻き込むなっての」
ばかなヤツ。
踏み出せば雪に埋まって濡れるつま先を見ながら、マフラーの中でこっそり笑った。
ぴっと足を振って、ブーツに乗っかった雪を振り落とす。
あーあ。
ガキどもは浮かれてたんだろうか。
忙しいだろうけどちゃんと掻けよ、後で怒られっぞ。
センセーは怒らすとコエェだろう?
昔を懐かしみながら通用門の横を通り過ぎようとすると、飛び出してきた小さな影とぶつかった。
勝手口から繋がるここを通るのは教会の関係者くらいだ。
と言うこは。
「ごめんなさい・・・・・・あら?」
「!」
見知った顔に体が固まる。
イヤ、でも。
オレの事なんて覚えてないかもしれないし・・・。
皺に囲まれた深い色の目が微かに見開かれて、その後くしゃりと微笑んだ。
「おかえり、章君」
ああ、畜生。
鼻の奥が熱い。
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