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アルバムをなぞる指先の決断5
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携帯から聞こえる杏子さんの声は、やたらと小さく遠くに聞こえた。
杏子『マキちゃん、今どこにいる?』
聞き取りづらくておもわず聞き返した。
スーパーの駐輪は賑わってて、やたらと雑音もあったけど、いつもの杏子さんじゃなかった。
杏子『マキちゃん、今って学校?』
やっと聞こえた杏子さんの声は、震えてる。
マキ「ううん、買い物してた。どうしたの?」
深刻な話なんだと静かそうな駐車場の角に小走りで移動すると、それに気がついた緋色さんは僕の方をジッと見てた。
杏子さんは何度も深呼吸して、ゆっくり言葉にした。
杏子『マキちゃん、落ち着いて聞いて』
マキ「うん」
杏子『…百目鬼さんが、
……昨日…、
……事故に遭って…』
マキ「……え?」
杏子『スリップ事故で…、病院に運ばれて…、重体だって…』
戦慄に貫かれた瞬間
大きな逞しい体が自分を包み込み、泣きべそな僕をどう扱ったらいいのやらと眉間にしわを寄せながら、俺がいるから全部晒せと、愛情いっぱい抱きしめてくれる大好きな顔が過って
…消えた。
杏子『…追跡中に、…車で…体当たりされて…、雪で…道が滑って…』
杏子さんの声が聞こえなくなりそうになりながら、体の感覚が無くなっていく。
震えだした手が、携帯を落としそうになって、慌てて強く握りなおした。
落ち着け…
落ち着け…
マキ「ッ…、杏子さん、どこの病院?」
杏子『場所は…ッ…福島なんだけど、今は家族以外面会謝絶でっ…ッ…』
マキ「杏子さん、泣かないで、大丈夫だから」
杏子『ど、…百目鬼さんッ…、意識がなくてッ…』
マキ「…杏子さん、百目鬼さんはきっと大丈夫だから。どこの病院にいるの?。・・・。うん。・・・。うん。分かった。ありがとう」
杏子『マキちゃん…行っても百目鬼さんには会えないよ。病院には、百目鬼さんの家族が行ってて、百目鬼さんが意識を取り戻すまではきっと…』
マキ「杏子さんありがとう。行くだけ行くよ。杏子さんたちは?」
杏子『ッ…、百目鬼さんに任されてる仕事があって…、今は動けないの…』
マキ「分かった、僕が行って詳しい状態聞いてくるから、安心して」
杏子『マキちゃん…大丈夫?』
マキ「僕は大丈夫だよ。心配しないで」
取り乱す杏子さんを宥めて電話を切った。
さっきまでの手の震えは止まってて、頭の中は戦闘態勢に切り替わった。
車で待ってる緋色の元に戻り、何事もなかった顔して、勢いよく両手を合わせた。
マキ「ごめん!緋色さん!、僕、凄い大事な急用が出来ちゃって、その買い物袋明日まで預かって」
緋色「え?…、あぁ、いいよ。どうしたの?」
マキ「ごめん、僕行かなくちゃ!」
慌てて駆け出そうとしたけど、すぐに緋色さんに腕を掴まれた。そこには、今までチャラチャラした緋色はいなかった。
緋色「マキちゃん、今かなり動揺してるだろ。初めて来た場所なのにどこに行こうとしてるの?言いたくないなら何があったかは聞かないから、どこに向かおうとしてるのか言いな」
急に察知されて、自分は取り繕えてなかったのか、冷静にならなきゃって混乱しはじめて言葉に一瞬詰まった。
マキ「ッ…」
その一瞬の怯みに、緋色が入り込む。
緋色「マキ、緊急なんだろ!」
マキ「ッ…、し、…新幹線に乗りたい」
緋色「任せな!」
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